ispace-U.S.とAgileが共同開発した革新的なエンジン「VoidRunner」
2023年、株式会社ispaceの米国法人であるispace technologies U.S., inc(以下ispace-U.S.)は、Agile Space Industries(以下Agile)と共同で新型エンジン「VoidRunner」を発表しました。このエンジンは、ミッション3における重要な要素となる予定です。
背景:新型エンジン開発の必要性
もともとAPEX 1.0ランダーにはAgileのA2200エンジンを搭載する計画でしたが、調達の難しさが判明しました。その結果、ispace-U.S.、Agile、そしてドレイパー研究所のチームは協議を重ね、「VoidRunner」を開発する決定を下しました。このエンジンは、高推力を持ちながらも構造を簡素化することが求められたため、様々な技術的な革新が考慮されています。
「VoidRunner」の特長
「VoidRunner」は、その設計において従来のエンジンアーキテクチャをベースにしながら、推力やノズルの効率を最適化しています。特筆すべきは、エンジン部品点数が4分の1に削減されたため、機体構造の大幅な簡素化が可能になった点です。この変更は技術的・スケジュール上のリスクを軽減するための最適解とされ、ミッション全体の成功率を向上させることが期待されています。
さらに、ispace-U.S.が独自に開発したバルブによって「VoidRunner」のスロットル制御が実現されるなど、高い信頼性を持つ推進システムの構築が進められています。これにより、ミッション成功の確度が一層高まるでしょう。
打ち上げスケジュールの変更
技術的な再調整が必要になるため、ミッション3の打ち上げ時期は当初の2026年から2027年以降へと変更されました。この変更は長期的に見て重要だとispace-U.S.のCEOエリザベス・クリストも言及しています。
「今回の変更は単なる戦略的変更にとどまらず、私たちのミッションへの揺るぎないコミットメントを示すものです」と彼女は強調しました。各団体からのフィードバックを受け、最善策を導き出す努力を続けているのです。
今後の展望
今後、「VoidRunner」のクリティカル・デザイン・レビュー(CDR)が2025年秋に予定されており、その後グローバルCDRが冬に行われる計画です。これにより、エンジンの設計と機能がさらに検証されることになります。AgileのCEOクリス・ピアソンも「『VoidRunner』は、性能要件を満たすだけでなく、長期的な効率性向上にも寄与する」と述べ、エンジンの性能に自信を持っています。
まとめ
新型エンジン「VoidRunner」は、ispace-U.S.とAgileのコラボレーションによって新たな可能性を切り開くプロジェクトです。月への輸送サービスの革新を目指し、ミッション成功の手助けとなるこのエンジンが、今後の開発にどのような影響を与えていくのか、その動向に注目です。