「ケアびー」で高齢者のコミュニケーションを支援!Hubbit株式会社 臼井 貴紀氏インタビュー
超高齢化社会が進む日本。介護問題や認知症リスクは、誰もが直面する可能性のある課題です。そんな中、東京都・品川区のHubbit株式会社は、高齢者が簡単に使えるコミュニケーションツール「ケアびー」を開発し、高齢者の自立支援と家族とのつながりをサポートしています。
今回は、Hubbit株式会社 代表取締役の臼井貴紀氏に、起業の経緯や事業内容、東京立地のメリットについてインタビューしました。
祖父の経験から生まれた「ケアびー」
臼井氏が「ケアびー」の開発に着手したきっかけは、自身の祖父の終末期を体験した経験でした。寝たきりの祖父は、意思疎通が困難となり、介護に携わる祖母に多くの負担がかかっていました。
「祖父は、自分の意志を持って生きることができない状況でした。私は、何か方法で意思表示をできるようにしたいと考えました。」
当時、ヤフー株式会社に勤務していた臼井氏は、ITを活用してコミュニケーションの手段を増やせないかと考え、エンディングまわりをIT化するプロジェクトを立案しました。しかし、社内新規事業コンペで惜しくも落選。それでも、この課題に対する強い思いは消えず、友人のエンジニアと合同会社を設立しました。しかし、会社員を辞める決意ができず、数年で解散。その後、転職した会社で経営者の方との出会いがあり、再びプロジェクトを始動する決意を固めました。
そして、2019年3月にHubbit株式会社を設立。当初は葬儀や相続、遺書などのIT化も視野に入れていましたが、高齢者がスマホを使いこなせないという課題に直面しました。そこで、高齢者の方でも使いやすいツールを開発することに焦点を当て、デジタルデバイド解消に取り組むことを決意しました。
ほぼ操作不要!家族との繋がりを深める「ケアびー」
「ケアびー」は、介護が必要な高齢者や認知症になった方が簡単に使えるコミュニケーションツールです。最大の特長は、ほぼ操作不要で使える点です。
「認知症の方だけでなく、高齢になると電話を取れなくなるケースも多いですが、『ケアびー』があれば、家族の顔を見ながら通話できます。カメラのオンオフは家族のスマートフォンから操作でき、画面の下には字幕機能も搭載。文字で見せることで理解を促し、耳が聞こえにくい方や認知機能が低下した方でも安心して使っていただけます。」
初期設定が完了した状態で利用者の元に届き、コンセントをつなげて電源を入れるだけですぐに利用可能です。インターネットの準備も不要です。服薬確認や予定確認などを定期的にメッセージ配信するリマインド機能も好評とのことです。
「『ケアびー』は、家族との繋がりを深めるためのツールとして、高齢者の自立支援に役立っています。一度慣れてしまうと、認知症の症状が重い方でも定着します。使いたくないと嫌がっていた方が、1カ月後に訪問したら『ケアびーさんには数年前からすごくお世話になっています』と言ってくださったり、家族から連絡が来るとわかると皆さんすごく喜んでくれます。」
東京立地がもたらすビジネスチャンス
Hubbit株式会社のオフィスは、山手線大崎駅より徒歩8分の「SHIP(品川区立品川産業支援交流施設)」にあります。
「SHIPは利用料金が安く、個室オフィスは24時間利用可能です。時間の制約なく仕事に打ち込める快適な環境です。当社のサービスは地方需要が高く出張が多いため、品川駅に近い立地も大きなメリットだと感じています。」
さらに、臼井氏は東京立地のメリットとして、以下を挙げています。
各方面の事業者が多く、困りごとをすぐに解決できる
IT関係、タブレット開発、OS開発、通信キャリアなど、都心部に本社がある企業が多く、直接会うのも容易
イベントや勉強会の数が多く、そこで課題を解決できる機会がある
ベンチャーキャピタルも東京に集中しており、資金調達の面で有利
今後の展望
「『ケアびー』のサービスを全国で展開し、後期高齢者のインフラにするのが目標です。そして、介護が必要になっても自宅で最期まで過ごせる介護施設と在宅介護の中間の世界観を作っていきたいと考えています。介護保険の仕組みと『ケアびー』を組み合わせれば、夢ではないと考えています。」
臼井氏の熱い思いと、高齢者の生活を豊かにしたいという強い意志を感じたインタビューでした。今後の「ケアびー」の更なる発展に期待が高まります。