胃がん早期発見への新しい道 - GASTROClear™の全国プログラム
2025年7月23日、シンガポール発のバイオテクノロジー企業Mirxes(ミレックサス)と日本のナガワ薬品株式会社が協力し、非侵襲的なマイクロRNAベースの血液検査「GASTROClear™」を用いた胃がん早期発見のためのパイロットプログラムを日本全国で開始することを発表しました。このプログラムは、全国で1万人を対象とし、特に高齢者の受診促進を目指しています。
日本における胃がんの現状
日本では、胃がんは主要ながんの一つであり、特に50歳以上の人々において70~80%がピロリ菌(Helicobacter pylori)に感染しています。この感染は、日本の胃がんの90%以上に関連していることが医学的に知られています。しかし、早期発見と早期治療を実現するためには、スクリーニングの受診率向上が鍵となります。がん情報サービスによると、2022年の胃がん検診受診率は男性で45.7%、女性で36.5%と低迷しており、受診しない主な理由には時間的制約、身体的負担、経済的な不安が挙げられます。
GASTROClear™の特長
本プロジェクトでは、従来の内視鏡検査やバリウム検査とは異なり、身体的負担が少ない短時間の血液検査を利用します。心疾患や呼吸器疾患の既往歴を持つ方、または高齢による体力低下から従来の検査を避けていた方々にも適しています。この検査は、以下の主要な目的を持っています。
1.
胃がんに対する意識向上: 胃がん検診の重要性について広く情報を提供します。
2.
検診受診率の改善: 幅広い世代に非侵襲的な検査へのアクセスを促進します。
3.
医療機関の負担軽減: スクリーニング検査の実施により、医療機関や人材の負担を軽減します。
鳩山元首相のメッセージ
この取り組みに対して、日本第93代内閣総理大臣の鳩山由紀夫氏は、「革新的なスクリーニング技術にアクセスを提供することで、健康寿命の延伸と医療費の削減が期待される意義ある一歩です」とコメントしています。この言葉には、国民の健康を守る使命感が込められています。
Mirxesの使命
MirxesのCEOである周砺寒氏は、「RNA技術を活用し、がんを早期に見つけ治療する世界を実現することが私たちの使命です。GASTROClear™はその第一歩であり、皆様と共に科学に基づく予防医療の未来を構築していきたい」と語っています。
課題と期待される効果
実際のスクリーニングを行うことで、高齢者の受診率は低い状態から改善されることが期待されています。70歳以上の高齢者の半数以上がピロリ菌に感染しているにもかかわらず、受診率が低い現状に対する新しい対策となるでしょう。ナガワ薬品の常務取締役、大段正司氏は、「GASTROClear™は身体的・心理的負担を大幅に軽減できる画期的な方法」とし、この技術を広めることで、未病を防ぐ“予防医療”を日本社会に届ける意義を強調しています。
Mirxesの歴史と展望
Mirxesは、シンガポール国立大学出身の創業者によって2014年に設立され、2020年から日本市場に進出しました。2025年には香港証券取引所に上場し、約1億3900万米ドルを調達。GASTROClear™は既に複数国で承認されており、特に高齢者や病歴のある方々にとって負担の少ない検査として期待されています。今回のパイロットプログラムにより、GASTROClear™の実用性に関するデータが集まり、医療機関や自治体での導入に向けた道を切り開くことが期待されています。
まとめ
Mirxesとナガワ薬品の共同プロジェクトは、日本における胃がん早期発見という重要な課題に対し、非侵襲的な血液検査を通じた新しい解決策として注目されています。今後、この取り組みが全国的に広がり、多くの人々が恩恵を受けることが期待されます。