進化する不動産営業:AIを活用した教育の新たな試み
石川県金沢市に本社を構える株式会社クラスコが、AI技術を駆使した賃貸営業ロープレを始めた。この新しい試みは、加速する人手不足や教育リソースの不足といった社会的課題に大きく貢献することを目指している。クラスコは業界のリーダーとして、先進的な営業教育の形を模索している。
不動産業界の人材不足とAIの役割
全国的に不動産業界の人材不足が進行する中で、厚生労働省によれば、不動産業界の離職者数は入職者数を約11万人上回り、入職超過率が業界内でワースト3位になるという厳しい状況が続いている。そのため、2024年5月時点では不動産業界の転職求人倍率が高水準に達しており、人材の確保がますます難しくなっている。
同時に、営業スタッフの教育に関する課題も浮上している。OJTの属人化や教育の品質のばらつき、接客スキルの標準化が難しいという問題が長年にわたって指摘されてきた。こうした現状を打破するため、クラスコは生成AIの活用に積極的に取り組み、リアルな環境での教育を実現することに舵を切った。
「AI賃貸営業ロープレ」の具体的な内容
今回導入された「AI賃貸営業ロープレ」では、クラスコのこれまでの営業ノウハウと61年間にわたって培ったナレッジを基にしている。また、現場経験を活かしながら設計されたこのロールプレイングは、決して人を置き換えることが目的ではなく、人の可能性を拡張するためのものだ。
実施のフレームワーク
このロールプレイは、AIが設定した顧客役「田中一郎さん」との仮想接客を行うもので、新婚カップルの住まい探しに伴う相談がテーマだ。ここで参加者は、AIからのダイアログを通じて、リアルな接客シーンを模擬していく。
- - 営業役: クラスコ社内スタッフ(参加者)
- - 顧客役: AIに設定された「田中一郎さん」
- - シチュエーション: 住み替え相談における顧客との接客
このように重視されるのは、リアルな会話を通じた信頼構築能力の向上である。AIは顧客のニーズに基づいたインタラクティブなフィードバックを行い、参加者への評価を行うことができる。
クラスコのスタッフたちの気づき
AIロープレに参加したスタッフからは、実際の接客に近いリアルな会話によって、テストクロージングや信頼構築の重要性を再認識したとの声が挙がる。彼らは、顧客のニーズを正確に把握するための質問の重要性を理解し、その結果を基にしたフィードバックが自分たちの成長に寄与していることを実感している。
- - 「AI相手でもリアルで緊張したが、フィードバックにより改善点が見え、自信に繋がりました」
- - 「やり取りがスムーズで、従来のような緊張感はなかった」
- - 「具体的なアドバイスも役立ち、今後の接客に活かせそうです」
AI活用の展望と効果
クラスコは、AIの導入により営業スタッフの自主練習や教育負担の軽減、接客の質の向上を目指す。これにより、顧客との長期的な関係構築や顧客生涯価値(LTV)の最大化を図っていく考えである。さらに、AI技術を活用することで、従業員は場所を問わずスキルアップが可能になり、さらなる付加価値の高い業務に挑むことができる。
クラスコのビジョン
今回の取り組みを通じて、クラスコは技術と熱意を武器に不動産業界の未来を拓くために挑戦し続ける。人手不足という課題に立ち向かい、より良いサービスを提供するための新たな方法を模索し続ける姿勢が、クラスコの真骨頂と言える。
専務取締役 清水 秀晴のコメント
「AIの力を借りることで、我々の営業スキルを引き上げることができる。顧客に最高の満足を提供するため、最先端の技術を駆使し続ける決意です。」
クラスコは今後、賃貸営業のみならず、クレーム対応トレーニングなど他の分野でもAIを活用した教育を進めていき、更なる成長を目指す。これは、業界の未来に向けた重要なステップとなるだろう。