心の病を理解し、人に寄り添う優しさについて考える新刊

心の病を読み解く新著の登場

2025年6月25日、精神科医・斎藤環さんによる新刊『別冊NHK100分de名著集中講義中井久夫心の病の「豊かさ」を読む』が発売されます。この書籍は、名著を短時間で理解することを目指した人気番組「100分de名著」の特別版にあたります。斎藤環さんはこの本の中で、苦しい思いを抱える人々に寄り添い続けた精神科医・中井久夫の寄せた著作を読み解き、その洞察を深めます。

中井久夫とその思想

中井久夫は、統合失調症の治療に精力的に取り組む一方で、阪神淡路大震災の際には、被災者の心のケアに多くの努力を注いできました。彼のやさしさは、単に感情的なものでなく、鋭い知性と深い教養を備えています。文筆家としても著名であり、思索の果実を多彩な表現に昇華させた名著を数多く世に残しました。

本書では、中井久夫が提唱した複数の文化的視点から「病」を捉え、心の病に対する豊かな理解を促します。特に、斎藤環さんが彼の著作から読み取った独自の文化論や社会に対する深い洞察は、読者に新たな視点を提供します。

目次の構成

本書は、以下のセクションから成り立っています。

1. はじめに──義と歓待と箴言知のひと
2. 第1講「心の生ぶ毛」を守り育てる――『最終講義』
3. 第2講「病」は能力である――『分裂病と人類』
4. 第3講多層的な文化が「病」を包む――『治療文化論』
5. 第4講精神科医が読み解く「昭和」と「戦争」――『「昭和」を送る』『戦争と平和ある観察』
6. 第5講「記憶」がひらく新たな地平――『徴候・記憶・外傷』
7. あとがき
8. 中井久夫著作リスト

この目次からもわかる通り、斎藤先生は多様な視点を持ちながら、中井久夫が語った複雑な心の問題に対して深い洞察を試みています。

斎藤環のプロフィール

斎藤環さんは、1961年に岩手県で生まれ、筑波大学の名誉教授として精神科医療の分野で活躍してきました。彼は思春期や青年期における精神病理学を専門としており、また時事問題から文学、美術に至るまで幅広く評論活動を行なっています。著書には、精神分析的アプローチからの核心に迫る作品が多く、読者の心に響く内容を綴っています。彼の活動は、社会における心の問題に対する認識を高める手助けをするものです。

今後の展望

本書の出版を通じ、心の問題に対する理解が深まり、より多くの人々に優しさの重要性が伝わることを期待しています。心の病を抱える方々とその周囲にいる人々が、この本を通して新たな視点を得られることを願っています。

定価は1100円（税込）で、160ページの内容が詰まっています。興味を持たれた方は、ぜひ書店やオンラインで手に取ってみてください。