小中学校における生成AI活用の実態調査の成果と課題

生成AIの教育利用実態を明らかにする調査

近年、生成AIの教育利用が進み、特に小中学校においては児童生徒の学習スタイルにも変化が見られます。社会人向けの総合専門職大学院である社会構想大学院大学の中川教授と上越教育大学の榊原教授による調査チームは、生成AIの「ブラウザAI要約」がどのように活用されているのか、その実態を探るために調査を実施しました。この調査結果は2025年に発行される『月刊先端教育』の2026年2号に掲載される予定です。

調査の目的と方法

本調査は、GIGAスクール構想のもと、情報端末の利用が進んでいる小中学校の実情を反映することを目指しています。特に、「ブラウザAI要約」と呼ばれる自動生成された情報がどれほど使用されているのか、またその利用が教育に与える影響を把握することが目的です。調査は2025年の10月下旬から11月下旬にかけて実施され、関東、近畿、北陸の自治体から1,090名の教員が参加しました。質問はGoogleフォームを用いて行われ、自由記述の回答も含まれています。

主な調査結果

調査の結果、教員の71.5%が児童生徒の調べ学習でブラウザ検索を利用していると回答し、一方でブラウザAI要約を推奨している教員はわずか10.1%にとどまりました。大多数の教員はその利用に否定的であり、推奨しないと回答したのは84.3%に上ります。また、教員の指示なしに自主的にAIを使用している児童生徒は38.5%に達し、特に中学校では51.3%という高い率が見られます。こうしたデータは、CSSや画像などの自動生成コンテンツが児童生徒の学びにどのように影響を与えているのかを示唆しています。

教員の見解と課題

教員の多くは生成AIの使用を「推奨しない」としながらも、教員の指導外での利用が増えている現実があります。この「シャドー利用」と呼ばれる現象は、教員方針と実情の乖離を生み出しています。また、ブラウザAI要約が自動表示されるため、児童生徒は「検索→AI要約をそのまま丸写し」といった行動が見受けられ、本来必要な情報整理や比較のプロセスが省略される懸念があります。

特に中学校においては、自主性が高まる一方で、提出物へのプレッシャーが影響し、「浅い学び」に陥る危険が指摘されています。児童生徒が要約内容をそのまま利用するケースも高く、教育現場における指導の見直しが求められています。

今後の提案

研究チームは「深い学び」を実現するために、生成AIを活用しながら思考を深めるための具体策を提案しました。第一に、生成AIが要約した内容の出所を確認する工程を設けること。第二に、学習成果として提出される資料には参照・引用箇所や比較内容を含めること。第三に、AIの出力を「結論」としてではなく、「参考の一つ」として位置付ける姿勢を育てる必要があります。

最後に

この調査は、生成AIが教育においてどのように利用されているか、またその影響についての重要なデータを提供しています。今後、教育現場や政策に関わる関係者がこの結果を参考にし、より効果的な教育方針を検討することが期待されます。教育の未来を形成するため、引き続き生成AIの利用方法やその影響について注目していく必要があります。