高齢者の除雪機事故を防ぐための新たな提言
独立行政法人製品評価技術基盤機構、通称NITEは、最近発表した「除雪機の事故防止対策報告書」で、高齢者による除雪機の使用によって生じる事故を減少させるための具体的な提言をまとめました。この報告書は、過去の事故データを分析し、リスクアセスメントを行った結果、明らかになった事故を未然に防ぐための対策を示しています。
除雪機事故の現状
NITEが収集した事故データによれば、2007年度から2023年度までに報告された除雪機による事故は合計100件に上ります。この中には死亡事故が45件、重傷事故が22件含まれています。最も多く発生しているのは「ひかれ」「巻き込まれ」「挟まれ」のケースであり、高齢者が直面する危険が数多く見受けられます。
事故の多くは重篤な結果を招く可能性があり、このためNITEは特に強調しています。これらのリスクを評価し、高齢者が安全に除雪機を使用できるようにするために必要な対策を講じることは極めて重要です。
報告書によるリスクアセスメント
報告書では、危害シナリオを「ひかれ」「巻き込まれ」「挟まれ」「手を突っ込む」「火災」「CO中毒」に分類し、それぞれの事故に対処するリスク低減策を提言します。特に高齢者が関与する事故の多くは「ひかれ」や「巻き込まれ」なため、これらに対する具体的な改善策が求められています。
具体的な対策例
1.
ひかれ事故に対する対策:
- 後進時の速度を抑える機構の導入(2023年度以降の350kg以上のモデルに実装)
- 後退時に非常停止するためのバーの設置(同上)
- クローラ部分にひかれ防止用カバーの装着
- 音で後退を知らせるシステムの導入。
2.
巻き込まれ事故に対する対策:
- 回転部にガードを装備する
- 人感センサを装着し、接近時に回転を自動停止
- 滑りづらい靴の着用を推奨。
3.
挟まれ事故に対する対策:
- 後進時の速度を低くする(2023年度以降の350kg以上のモデルに実装)
- 挟まれ検知後に前進する機構を装備。
4.
手を突っ込む事故に対する対策:
- 雪詰まりを防止する素材や構造の採用
- 手を突っ込んでも内部に触れない構造を導入
- 雪かき棒を使って雪詰まりを解消することを徹底。
これらの対策は、今後の製品設計において非常に応用可能なものとして期待されています。NITEは、これにより高齢者の安全を守る環境作りが実現すると信じています。
事故情報の収集と分析の重要性
NITEの製品安全センターでは、毎年消費生活用製品に関する多くの事故情報を収集し、その分析を行っています。これによってリスク評価を行い、事故を未然に防ぐための情報を発信しています。安全な商品を利用できるようにするためには、正確なデータに基づいた対策が必須です。
事故の再発を防ぐためにも、今回の報告書で示された対策や知見を多くのユーザーや製品メーカーが理解し、実行していくことが求められています。高齢者が安心して除雪機を使用できる社会を目指して、今後もこのような取り組みが進むことを期待しています。