東京大学の出資が進める新たな地中貯留技術
東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)は、二酸化炭素の地中貯留(CCS)事業を展開する株式会社ウェーブレットに5,000万円の出資を決定しました。今回の出資は、ONE Innovators株式会社との共同出資であり、これによりCCS技術の利用促進が期待されています。
CCS技術の重要性と課題
二酸化炭素の地下貯留事業は、気候変動対策としての重要度が増していますが、貯留後のモニタリングコストが全体の事業性を左右する大きな課題となっています。現在の手法では、地下のCO₂の挙動を数十年にわたって追跡するために、圧力や温度のモニタリングの他、弾性波探査技術による測定が必要です。
弾性波探査は、地下状態の可視化に役立つ技術ですが、従来の方法では数億円ものコストがかかるため、より効率的で低コストな技術が求められていました。
ウェーブレットの革新技術
ウェーブレットが提案するのは、PASSと呼ばれる小型震源装置です。これにより、震源装置を持ち運べるサイズにすることで運用コストの大幅な削減を図ります。さらに、山中など従来の大型起震車ではアクセスできなかった地域にも対応可能となるため、持続的な弾性波探査による常時モニタリングが実現します。
この技術により、地域住民が二酸化炭素の圧入状況を常時確認できるようになり、地域との関係構築も図れることから、CCS事業の実現可能性が高まるとされています。
多様な社会課題への応用
また、ウェーブレットはPASSから発信される振動データの解析を強化し、地熱開発や土木分野における課題解決にも取り組む予定です。例えば、地下水位測定や、インフラ診断、埋設物の探査などに直接役立つ技術を展開していく考えです。これにより、従来の方法では時間と人手がかかる検査作業を効率化することが期待されています。
東京大学の研究との連携
ウェーブレットは、東京大学大学院の辻研究室と連携して研究開発を行い、PASSの技術をさらに発展させ、様々な社会的課題の解決に向けた新たな試みに取り組みます。辻教授は物理探査や宇宙探査の専門家として知られ、近年ではPASSを使った月面での地震探査計画など、業界の最前線を行っています。
持続可能な社会を目指す
ウェーブレットの代表取締役CEO、岩本友幸氏は、社会の持続可能性に貢献するため、新技術の活用や協力を通じて、各業界と連携を図りながら活動を進める意向を示しています。東大IPCもこの新たなプラットフォームからの成長を期待し、持続可能な未来に向けた研究開発の加速を支援する姿勢を表明しています。
まとめ
新しい技術をもたらす株式会社ウェーブレットと東京大学の協力は、二酸化炭素の地中貯留において新たな解決策を提供し、社会全体の脱炭素化に貢献することでしょう。これからの進展が非常に楽しみです。