島根県立大学のハントリーゼミが体験型学習を実施
島根県立大学の国際関係学部・国際コミュニケーションコースでは、ハントリー講師の指導のもと、3年次と4年次の学生たちが合同で地域貢献型の活動を行っています。このゼミの特色は、地域の子どもたちに向けた英語学習の支援や、海外学生とのWeb交流を通じて国際的な視野を広げることです。こうした取り組みを通じて、学生たちは地域に根ざした教育を実践しています。
その一環として、2025年6月25日(水)には学生たちが江津市桜江町にある「一憶ハウス」を訪れました。ここは舞台芸術家、Kimi Maeda(キミ・マエダ)さんのプロジェクトの拠点として再生された空き家です。この家はかつて、日系アメリカ人の家族が住んでいましたが、戦時中には子どもたちの疎開先としても利用されていました。長い年月が経つ中で空き家となっていましたが、Maedaさんがこの家の記憶を掘り起こし、芸術活動の場所に再生したのです。
訪問当日は、残念ながら雨が降っていましたが、苔むした坂道を上ったところで、Maedaさんが温かく迎えてくれました。この家の内部には、昭和や平成期の生活用品や日本人形、古い写真などがそのまま保存されており、学生たちは興味深く見学しました。彼らは当時の住人たちの暮らしに思いを馳せながら、これらの品々と触れ合う貴重な体験をしました。
さらに、Maedaさんの作品として、石州和紙に印刷された写真と古い襖を重ね合わせた作品も展示されており、過去と現在が交差する独特な空間に身を置くことができました。見学の終盤では、Maedaさんから「印象に残ったものは何ですか?」と問われた際、ある学生は「日本人形が特に印象的だった」と話しました。
その学生は、「幼い頃、おばあちゃんの家で見た日本人形が怖かった記憶と、今感じる懐かしさが交じり合って不思議な気持ちです」と続けました。Maedaさんはその言葉に応じて、「一つの物でも、それぞれの人に思い出があります。ここが“一憶ハウス”と名付けられた理由も、空き家になったこの家に刻まれた数え切れない思い出から来ています。このような経験を通じて、受け継がれるものについて考えるきっかけにしてほしい」と話されました。
この「一憶ハウス」では9月にもMaedaさんによる小規模なパフォーマンスが予定されており、ハントリーゼミの学生たちも今後数か月にわたりサポートする予定です。地域社会の一員として、彼らはこのプロジェクトの意義を深く理解しながら、その活動に関与していくことでしょう。歴史を学び、記憶を受け継ぐことが、今後の彼らの生活や学びにも大いに影響を与えるに違いありません。