エッジで組み合わせ最適化問題を高速処理!2つの独立したイジングマシン実装で相互作用数半減を実現
東京理科大学 工学部 電気工学科の河原尊之教授らの研究チームは、2つの独立した全結合型イジングマシンを実装することで、相互作用数を半減させる手法を実証しました。この技術により、エッジ側での大規模化が可能となり、社会に広がる組み合わせ最適化問題のより効率的な求解処理が期待されます。
ホップフィールドネットワークの課題克服
ホップフィールドネットワークは組合せ最適化問題の解を得られる一方、局所解に陥りやすいという課題がありました。全結合型イジングマシンは、こうした課題に対応できる機構です。今回、研究チームは、スケーラブルな全結合型イジングマシンのボード上に、2つの独立した384スピン全結合型イジングマシンを実装することに成功しました。これにより、相互作用数を半減させることが可能となります。
相互作用数半減手法:規則性を持たせることでスケーラブル構造に親和性
研究チームは、アレー状の回路の2次元配置に規則性を持たせることで、スケーラブル構造にも親和性が高い相互作用数半減手法を提案しました。
従来のイジングマシンでは、スピン数の2乗個の相互作用回路が必要でしたが、今回開発された手法では、相互作用行列を4つに分割することで、約半分の削減を実現しました。さらに、分割されたブロック内の重複する相互作用を削除することで、さらに相互作用数を減らすことが可能になりました。
実証実験:最大カット問題と四色塗分け問題を同時に解く
性能評価では、最大カット問題と四色塗分け問題という2つの組み合わせ最適化問題を同時に解きました。その結果、今回開発した2つの独立した384スピン全結合型イジングマシンは、CPUでイジングマシンを模擬してこの2つの問題を順次解いた場合と比較して、電力性能比が約400倍優れていることがわかりました。
社会への貢献
この技術は、物流ルートの最適化、金融ポートフォリオの決定、創薬・新素材開発など、様々な組み合わせ最適化問題の効率的な解を求めることが期待されています。特に、エッジ側での大規模化が可能になることから、社会に広がる様々な問題を高速かつ低消費エネルギーで解くことができるようになる可能性を秘めています。
研究チームの今後の展望
研究チームは、今後も全結合型イジングマシン技術の研究開発を進め、より大規模化、高性能化を目指していきます。将来的には、この技術を様々な分野に応用することで、社会に貢献していくことを目指しています。