岡山大学の全自動型AEDが変える救命の現場とその効果

岡山大学が発表した全自動型AEDの研究

心停止の救命には、迅速な初期対応とAED（自動体外式除細動器）の使用が不可欠です。ここで重要なのは、どのようにして一般市民がAEDを使いやすく感じ、迷わず行動できるかという点です。この度、岡山大学が発表した研究結果は、全自動型AEDの普及がもたらす救命効果の向上を示唆しています。

1. AEDの種類と特徴

AEDには大きく分けて二種類があります。一つは「半自動型」で、救助者がボタンを押す必要があります。もう一つは「全自動型」で、機械が自動で電気ショックを実施します。全自動型は日本では2021年から普及が進み、特に公共施設での利用が増えていますが、まだ一般市民にはなじみが薄いのが現状です。

2. 研究の概要

岡山大学の野島剛講師と中尾篤典教授の研究グループは、心肺蘇生講習で443人（医療従事者47人、一般市民396人）が両タイプのAEDを体験し、その使用感を調査しました。この研究は国際医学誌『Internal Medicine』に発表され、両型の使いやすさを比較したものです。

3. 一般市民の心理的負担

調査結果によれば、一般市民は全自動型を好む傾向があり、ボタンを押すためらいが軽減されていることがわかりました。これに対し医療従事者は、慣れ親しんだ半自動型を好むという結果が出ました。さらに、全自動型には「危険を感じる」などの意見も見られましたが、この研究は全自動型の導入が救命のスピードを向上させる可能性があると指摘しています。

4. 講習内容の見直しの必要性

特に重要なのは、現状の心肺蘇生講習で全自動型AEDに関する教育がほとんど行われていないことです。全自動型AEDが広く普及するためには、その使い方を学ぶ機会が必要であり、講習内容の見直しが求められます。野島講師と中尾教授は、「心停止時にはためらわずに行動することが重要」であり、「全自動型AEDの使い方を理解することが救命に繋がる」と強調しています。