鳥類学者の冒険と爆笑の日々
川上和人氏が2017年に発表したエッセイ『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』が、8年の時を経て20刷目の重版を果たしました。この作品は、一見すると専門家によるただの鳥類に関する本のようですが、実際には彼の命懸けの冒険に満ちた、笑いと驚きにあふれる内容となっています。
理系蛮族の命がけの日常
川上氏の出張先は、火山やジャングル、さらには無人島。彼の冒険には毎回体力が必要不可欠で、体力三つ分が求められるという彼の言葉には、日常的な冒険が垣間見えます。例えば、噴火する火山の近くで溶岩と戦ったり、耳元をかすめる巨大な蛾に驚かされることも。しかも、そんな最中に吸血カラスを発見したのに、思わず意気消沈するというユーモアも加わります。
彼が語る内容は、単なる知識の提供にとどまらず、エンターテイメントとしても優れており、読み手を引き込んでやまない魅力があります。特に、増え続けるネズミに悪戦苦闘する様子は、ユーモラスながらも、科学者としての使命感を感じさせるものです。
章立てによる多彩な展開
本書は、さまざまな章立てで構成されています。例えば、第一章では「絶海の孤島での鳥類学者」と題し、彼の冒険先でのさまざまなエピソードが描かれます。火吹きの激しい火山や、耳に飛び込む蛾の襲撃、驚くべき自然現象との遭遇が、まるで映画のように描かれているのです。また、第二章では、実際に南硫黄島での死闘を通して、自身を鍛える過程が描かれ、科学者としての熱血ぶりが伝わってきます。彼の冒険はただのエクストリームな体験ではなく、自然との真剣な対話とも言えるのです。
笑いと感動のエッセイ
このエッセイは爆笑だけでなく、感動を呼ぶ要素も多く含んでいます。さらに、カタツムリが空を飛ぶという驚愕の話や、科学者としての疑問が提示される中、思わず考え込ませられる場面も出てきます。難解な科学の知識をテンポよく語るだけでなく、読みやすく、誰でも楽しめる内容になっています。
川上和人、異色の著者
著者の川上和人氏は1973年生まれの農学博士で、森林研究・整備機構の鳥獣生態研究室長という肩書を持ちながらも、一般の人々に向けて自らの知識や体験を面白く伝えることをライフワークとしています。彼の著書は数多く、ジャンルを問わず多彩な知識を提供しており、特に“鳥類学者無謀にも恐竜を語る”や“鳥の骨格標本図鑑”などは鳥類に関心がある人々に強く支持されています。
まとめ
川上氏のエッセイは、ただの鳥類学の知識を超え、彼の人生観や冒険の哲学を読み取ることができます。生き物とのふれあいや自然の中でのサバイバルは、彼自身の人間性を豊かにし、また読者にもその想いを伝える力を持っています。再版されたこの本は、単なる一冊の本を超え、彼の冒険を共有する窓口となっているのです。自然科学に興味がある人もそうでない人も、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。笑いの中から得られる新たなひらめきや感動が、あなたを待っていることでしょう。