能登半島地震復旧工事での遠隔操作システムの実証
2023年、能登半島において発生した地震の復旧工事で、前田建設工業株式会社と前田製作所が協力し、革新的な遠隔操作システムを導入した。その名も「Smart Construction Teleoperation」で、取手市に所在する研究施設から約500キロ離れた珠洲市の現場までバックホウを遠隔操作することが可能となった。
このプロジェクトは珠洲地区の道路復旧工事の一環で、斜面崩壊の影響を受けた場所での土砂集積作業において、作業員の安全性を最優先に考えた取り組みである。従来、作業員は崩れやすい斜面の近くでの作業を余儀なくされ、落石や転石による危険が常に存在していた。そのため、遠隔操作による安全な作業環境の構築が求められた。
遠隔操作の仕組みと運用
導入されたシステムは、コックピット、中継室、現場の建機の三つの主要部分で構成されている。作業はコックピットから行われ、制御信号は中継室を経由して現場のバックホウへと伝達される仕組みだ。この方式で施工を行うことで、作業員は安全な場所から作業を監視しながら操作を行うことができる。
実証の結果と知見
現場での実証では、遠隔操作による掘削や土砂の集積、仮置きといった基本的な作業が問題なく遂行できることが確認された。しかし、精密整形や急斜面での移動、さらには流れ作業による高速施工においては、依然として難易度が高いという課題も浮き彫りになった。また、施工速度は有人施工の約半分に留まることも明らかとなった。
さらに、通信環境にはStarlink Businessを利用し、高速で安定した通信を実現した。具体的には、264Mbpsの通信速度と120msの遅延を達成し、遠隔操作に必要な性能基準を超えるデータを確保できた。特に、海側に設置したStarlinkアンテナによっては、安定した通信が確認され、今後の展開に向けた期待が膨らむ。
今後の展望
今回の実証を通じて得られた知見を基に、さらなる課題の抽出が進んでいる。前田建設工業株式会社は、今後もこの遠隔操作システムの導入を検討し、災害復旧や危険な作業の安全性向上を目指していく方針だ。また、引き続き新技術の開発や改善に取り組み、より安全な作業環境の実現を目指す。災害復旧の分野において、遠隔操作技術は不可欠な存在となりつつある。
この取り組みは、地震災害の影響を受けた地域において、安全で迅速な復旧を実現するために、今後の可能性を示唆している。安全性を確保するためのキャッチアップが求められる中、前田建設工業が手掛ける新たな技術の展開に注目が集まる。