宮崎県から新たな物流システムが始動
2025年2月に、(公財)流通経済研究所は農産物と日用雑貨の共同物流に関する実証実験を宮崎県で行いました。このプロジェクトは、物流情報を共有し、環境負荷を削減し、労働環境の改善を目指しています。日本の物流は96%がトラックに依存し、そのためトラックドライバーの不足や効率の悪い運用が課題となっています。これに対抗すべく、業界を超えた共同物流の可能性が模索されたのです。
1. 実証の背景と目的
日本の農産物や食品流通は98%がトラックで運ばれ、多くの課題を抱えています。特にドライバー不足と時間外労働規制の強化が影響し、持続的な物流システムを築くことが求められています。さらに、片荷輸送や情報の非共有が効率を損なっています。これを克服するため、「BRIDGE1」プログラムでは、スマートフードチェーンプラットフォーム「ukabis」とリテール物流基盤を連携し、共同物流の枠組みを作り、必要な検証を行いました。
また、九州と本州をつなぐ物流ルートの多元化も同時に進められます。現在、東京から九州に向かうルートはほぼ福岡県を経由しており、災害時のリスクを考慮する必要があります。そこで、えびの市に新設された物流拠点を活用したルートの効果も検証されています。
2. 実証実験の概要
この実証実験は2025年2月2日から2月8日の期間に行われました。主な物流ルートは次の通りです:
- - 往路: 宮崎港 → 神戸港 → 東京(農産物を輸送)
- - 復路: 東京 → 大阪 → 神戸港 → 宮崎港 → えびの市(復路には日用雑貨を積載)
この連携により、農産物の生産情報と日用雑貨の物流情報の融合が図られ、特に復路での有効な積載が実現します。これがBCP機能の向上や環境負荷の軽減に寄与する可能性があります。
3. 実証実験の結果
この実証実験では、いくつかの重要な成果が確認されました。ukabisとリテール物流を連携させることで、宮崎からの帰り荷確保が容易になり、安定した日用雑貨の量が確保されました。これにより、実車率の向上や運行の安定性が期待されます。また、フェリー輸送を活用することでCO₂排出量が約31%低減され、ドライバーの拘束日数も短縮されるという利点も生まれました。
さらに、往路の青果物と比較して、日用雑貨はパレット輸送により荷役時間が大幅に短縮され、労働負担が軽減されることが実証されました。このように、青果物もパレット化することで同様の効果が期待されます。
4. 課題と今後の展望
今後の課題としては、青果物のパレット輸送によるコストや積載率の低下が挙げられます。これを克服するためには、長距離幹線輸送の効率を上げ、ラストワンマイル配送の柔軟性を確保する必要があります。また、地域と企業間での情報共有も重要です。
実証実験から得た知見を活かし、共同物流を広げ、往復輸送を強化することで日本全体の物流の効率化を進めていく計画です。これにより、災害時の備えと平常時の物流ネットワークの安定向上を図ることが期待されます。
成長する農産物と日用雑貨の物流連携の未来は明るく、環境問題への配慮が求められる中、この試みが持つ意義はますます大きくなっていくと言えるでしょう。私たちの生活に直結する物流の未来を共に考えていきましょう。