草加市が織り成す広報紙の新しい挑戦
草加市は、かつて「読まれない紙」として知られる広報紙の改革を果たし、全国にその名が知れ渡る存在となりました。この改革の中心には、広報課の安高昌輝さんと西田翼さんがいます。彼らは現場の状況を鋭く把握し、広報の構造そのものを見直すことで、市民とのコミュニケーションを改善しようとしました。
伝えることと届くことの違い
以前の広報紙は、重要な情報が正確に記載されているにもかかわらず、市民にとっては魅力に欠けていました。特集がなく、写真も少なく、情報がただ文字として羅列されているだけだったため、市民にとって身近に感じられない存在でした。安高さんは、「このままでは市民にとって逆ギレの結果を招く」との思いで改革の必要性を感じていました。
改革の具体的な内容
改革の初めのステップは、紙面の構成を根本的に見直すことでした。情報を発信する際に、「何を」「誰に」届けたいのかをまず問い直し、見出しや写真、余白に至るまで改良しました。この改革を進めたのが西田さんです。「ただ発信するだけでは伝わらない」と彼は語ります。この考え方を最大限に活かし、広報の“設計思考”を導入しました。
新しいアプローチの採用
草加市は、以前のようにすべての課からの依頼を無制限に掲載するのではなく、記事の掲載数に上限を設け、それにより発信する情報をより戦略的に選定することにしました。これにより、市民に価値のある情報のみを届ける体制が整いました。「情報は多ければ良いわけではない」と西田さんは強調します。情報の質が重要視される時代にピッタリのアプローチです。
市民の反応と全国的評価
その後、少しずつではありますが、広報紙に対する市民からの反響が増えていきました。「今号の特集は面白かった」「以前よりずっと分かりやすい」という声が寄せられ、広報紙の内容だけでなく、紙面そのものに感想が届くようになりました。まさに広報紙が市民の生活に寄り添い、再び「戻ってきた」感覚が生まれました。
全国広報コンクールにおいても、映像部門で全国2位、広報紙部門で埼玉県1位を受賞し、その短期間での成果が称賛されました。しかし、安高さんはこれを単なる成功とは考えておらず、「これはスタートラインに過ぎない」と新たな目標への意欲を表明しています。
未来へ向けての一歩
2025年度には初めて専属デザイナーが広報課に配属され、より一層「届くための設計」が体制として整いました。これからも草加市の広報は、「伝える」と「届く」ことの違いを問い続け、さらなる進化を続けていくでしょう。新たな挑戦の航海は始まったばかりです。