日立が推進するAI技術でライフサイエンス分野の進化を目指す
日立製作所は、科学技術振興機構(JST)が進める「経済安全保障重要技術育成プログラム」において、東京大学がまとめる研究開発プロジェクトに参加することを発表しました。このプロジェクトは、ライフサイエンス分野に特化したもので、実験現場における高度な技能やノウハウをAI技術によって可視化し、誰でも高品質な実験が行える環境を構築することを目指しています。
プロジェクト名は「BioSkillDX」で、主にバイオ実験における肉体的な技能や知識をデータ化し、熟練者が持つ暗黙知を型にはめていく取り組みです。具体的には、細胞培養や各種バイオ技術の手法をAIによる分析のもと、記録し、非熟練者に対しても適切なフィードバックを行える仕組みを開発します。これにより、実験の再現性を向上させ、人材育成の効率を高め、研究開発のスピードを上げることが期待されています。
1. 技能のデジタル化
日立の取り組みの一環となるこのプロジェクトでは、熟練者の「ノウハウ」や「コツ」といった経験値をAIが理解し、認知することを可能にします。映像解析や特殊なセンサーを使った手指の動きのデータを収集し、AIはこれらの情報を解析して「感覚運動系AI技術」による支援を行います。これにより、従来は言語化が難しかった高度な技能がデータとして残され、組織内で共有されることで、実験の品質向上が図られます。
2. 個別最適な学習支援
さらに、AIはそれぞれの作業者の技能レベルを分析し、最適な実験プロトコルや資料を提供します。これにより、従来の一律の訓練方式から個別にアプローチするシステムへと進化します。非熟練者でも効果的に技術を習得できる環境を提供することができ、人材育成の促進にも寄与します。
このような取り組みは、多くの業界で求められているスキル伝承の効果的な方法として注目されています。技術が複雑になっていく現代において、特にライフサイエンス分野では技術者の減少が懸念されており、いかにして彼らの技能を継承していくかが重要な課題であることは言うまでもありません。
3. 今後の展望と社会貢献
日立は、ライフサイエンス分野におけるプロジェクトを通じ、AI技術をさらなる高みへと導くことを計画しています。プロジェクトで得られた知見を活用し、次世代のAIエージェント「Frontline Coordinator - Naivy」の開発も進めていく予定です。このエージェントは、医療や製造業、建設など幅広い分野に適応可能で、最終的には全ての現場において再現性と生産性向上に寄与することが期待されています。
2025年には、千葉県幕張メッセで開催される「CEATEC 2025」において本取り組みの一部が展示される予定です。これにより、日立の革新的な技術が多くの人に広まり、健康で豊かな社会の実現に寄与することが期待されます。
日立の研究開発に関する情報は公式ウェブサイトにて確認できます。