池坊専宗氏が創り出す新春の息吹―立花の美が六本木に吹く
2026年の新年を迎えるにあたって、日本の伝統文化「いけばな」の深みを体感できる特別なイベントが六本木ヒルズで展開されます。今年のテーマは「はざま、生」。これは、華道家であり写真家でもある池坊専宗氏の作品と、池坊麻布橘会のメンバーによる立花のコラボレーションによって誕生しました。このインスタレーションは、2025年12月27日から2026年1月7日までの期間、六本木ヒルズウェストウォークで公開されます。
新春の装飾「はざま、生」
開催される「はざま、生」は、私たち人間が自然と共に存在する姿を大胆に表現しています。池坊専宗氏の撮影した写真と、池坊麻布橘会のメンバーによる立花が融合したこのスペシャルな作品は、空間と花を通じて、静謐でありながらも強いメッセージを送ります。2026年という新しい年の始まりを祝うものとして、天と地の“はざま”に立つ我々の姿を、参加者が深く感じ取れるアート作品となっています。
フロアに広がる一続きの写真群は、陰影が深まる季節にぴったりの感覚を与えてくれます。地に根差した草木の姿と、空に向かって伸びる明るい姿を描くことで、日々の中で見落としがちな自然の美しさを人々に再発見させる狙いがあります。また、立花は「真」と呼ばれる形状で立ち、私たち自身が持つ姿を直に映し出しています。この瞬間がどれほど特別であるかを、花を通じて感じ取ってほしいという思いが込められています。
いけばな立花の魅力
池坊の立花は、室町時代から受け継がれた格式の高いいけばなの様式です。仏教の儀式から発展し、池坊専慶によって芸術的な表現として昇華された立花は、その美しさと深い意味を持ち合わせています。現在、池坊には「正風体」と「新風体」の二つの流れがあり、伝統的なスタイルを重んじるものと、現代的な解釈を加えたものがあります。
さらに、池坊専宗氏自身がこの立花を通じて、日常の美しさを表現するヒントを与えています。彼は、京町屋で育ち、華道家としてだけでなく、写真家としても活躍しています。作品の中には、自然を様々な視点から捉え直す意識が表れています。彼の信条は「光を感じ、草木の命をまなざすこと」。この言葉には、展示作品を通じて自らの感性を磨くと共に、他者と共有する場を設けたいという希望が感じられます。
伝統文化と現代芸術の交差点
池坊麻布橘会は、表参道や御茶ノ水を拠点に活動し、経済界のエグゼクティブメンバーが多く在籍している団体です。日本の伝統文化である華道を世界に発信するため、様々なイベントや教室を開催しています。今回の「はざま、生」というお正月装飾も、その一環として位置付けられています。新年の幕開けと共に、一堂に集められた華道家たちが制作する立花は、私たちに新たな可能性を感じさせるものです。
このように、池坊専宗氏の「はざま、生」は、伝統と現代、自然と人間が交わる美しい瞬間を体感させてくれます。気になる方は、ぜひ六本木ヒルズでの展示を訪れ、静謐な空間での心の休息を体験してみてはいかがでしょうか。流れる時間の中で、花を通じて贈られるメッセージをぜひ感じ取ってほしいと思います。