人的資本理論の実証化研究会の発表
一橋大学大学院の小野浩教授と福原正大特任教授が共同で座長を務める「人的資本理論の実証化研究会」(以下、「本研究会」)は、従業員の能力やスキルが企業の成長にどのように寄与するかを研究してきました。2024年度の分析結果では、人的資本への投資が営業成績に与える影響が明らかになり、その結果は企業経営における人材戦略の重要性を再認識させる内容となっています。
営業成績の向上
本研究会では、A社をモデルケースとして、営業部門における人的資本の変化が実際の成績にどう影響するかを分析しました。解析には階層ベイズモデルを使用し、特定の営業部門において「Jobレベル」の向上がどのように影響を与えるか数値化しました。結果、A部門では営業成績が平均11.9%向上し、B部門でも6.0%の向上が見られました。この数値は、人的資本が企業の営業成績向上に寄与する具体的な証拠となります。
賃金と利益の関係
加えて、研究会は賃金と利益の相関関係に着目しました。データ分析の結果、従業員の一人当たりの売上高は総労働力コストと正の相関を示し、従来の「人件費削減が利益向上につながる」という考え方を覆す結果となりました。これにより、「人への投資が収益を生み出す」という人的資本理論の妥当性が裏付けられました。
2025年度の取り組み
本研究会は2025年度に向けて新たに会員企業の募集を開始しました。テーマは「持続的な利益を生み出す人的資本戦略」であり、過去3年間の研究成果をもとに、企業への具体的なアプローチを提供します。特に、企業が人的資本を活用して持続的なキャッシュフローを生み出すための情報を経営陣や投資家が得られるようになります。
専門分科会の新設
新たに設立される3つの専門分科会では、人的資本理論の実践を深め、サステナビリティ情報との関連やグローバルな人材戦略に焦点を当てたプログラムが用意されています。それぞれの分科会では、参加企業のニーズに応じた具体的な支援が期待されています。
研究会の意義
本研究会の目的は、企業が人的資本に基づいた経営判断を行えるようになることです。この取り組みを通じて、データと理論に基づく人材施策が企業価値を向上させるための手段となることが期待されています。特に、経営戦略と人材戦略を結びつける事例が増えることで、今後の企業競争の在り方が変わっていくに違いありません。
もっと詳しい情報は、研究会の公式サイトやお知らせを通じて発表されています。興味がある方はぜひチェックしてみてください。