「2030デジタル・ライブラリー」実現に向けたロードマップ:大学図書館の未来像と課題

「2030デジタル・ライブラリー」実現に向けたロードマップ:大学図書館の未来像と課題



文部科学省は、オープンサイエンス時代における大学図書館の役割を強化するため、「2030デジタル・ライブラリー」推進に関する検討会を開催している。同検討会では、大学図書館の未来像を「デジタル・ライブラリー」として描き、その実現に向けたロードマップが議論されている。

検討会では、まず「オープンサイエンスの時代に相応しい『デジタル・ライブラリー』の実現に向けて」と題したステートメント案が提示された。このステートメントは、大学図書館が情報・データ・知識の発見可能性を高め、アクセスを保証することで継続的に知の再生産を担うという本質的な役割を強調している。

ステートメント案に対して、委員からは「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉の使い方が教育のみに限定されている点や、リスキリングへの言及が唐突であるといった指摘が出された。また、大学図書館間連携と大学内他部署との連携の記述バランス、知の再生産という表現の妥当性、1大学1図書館というコンセプトの扱い方なども議論となった。

続いて、「『デジタル・ライブラリー』推進に向けたロードマップ(案)」が提示された。ロードマップは、2030年の望ましい大学図書館像を目標に、コンテンツのデジタル化・オープンアクセス、大学図書館の論理構造である「ライブラリー・スキーマ」、人材育成・人事制度の3つの領域における具体的な取り組みを、2024年度から2030年度までのスケジュールで示している。

ロードマップ案に対しては、大学図書館間の連携が十分に盛り込まれていないこと、2030年の望ましい大学図書館像が中核的な項目のみを記載していること、研究データだけでなく幅広い学術情報への対応が必要であること、教育・学修面での具体的な取り組みが不足していることなどの指摘が出された。さらに、オープンアクセス推進に関する調査内容、自動検索システムという言葉の適切性、AI技術の活用に関する記述の必要性なども議論された。

検討会では、ロードマップにAI技術の活用や大学図書館間の連携をより明確に記述すること、教育・学修面での取り組みを具体化することなど、様々な改善点が示された。また、大学図書館の利用者範囲の明確化や「ライブラリー・スキーマ」の概念との整合性も重要な課題として認識された。

今回の検討会では、大学図書館のデジタル化、オープンアクセス、連携、人材育成といった重要な課題が浮き彫りになった。これらの課題を克服し、デジタル・ライブラリーを実現することで、我が国の学術研究の発展と社会実装、教育の質向上に大きく貢献することが期待される。

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