水中写真家・戸村裕行の新作写真集『蒼海の碑銘ー海底の戦争遺産』
2020年8月13日、イカロス出版から発売された『蒼海の碑銘ー海底の戦争遺産』は、水中写真家である戸村裕行の最新作です。この写真集は、太平洋戦争の歴史的遺産を深海から再発見する内容であり、著者が撮影した美しい写真とともに、その背景にある物語を伝えています。
海中に眠る艦船たちの記憶
本書では、太平洋戦争によって歴史的な運命を辿った艦船や航空機、潜水艦の姿が収められています。これらの艦船は、激しい戦闘の舞台となった海域に眠っており、今なおその痕跡をとどめています。水深50メートルを超える海底の光景は、まさに時の流れを超えた静寂の中で存在し続けているのです。
トラック諸島やソロモン諸島、さらには観光地としても名高いグアムやパラオなど、著者が訪れた多様な場所で撮影されたレック(沈没船)の写真は、見応えたっぷり。たとえば、マーシャル諸島・ビキニ環礁に沈む戦艦「長門」や、ミクロネシア・チューク州の駆逐艦「文月」などの姿は、暗い海底の中でも存在感を放つ美しい光景です。
深海の中の物語
特に印象的なのは、掲載されている艦船や航空機のそれぞれについての解説です。これにより、ただ美しい写真を見るだけでなく、歴史的な背景についても理解を深めることができます。なぜこれらの艦船が沈んでしまったのか、どのような戦闘が繰り広げられたのか、詳細な説明がついていることで、読者はまるで海底の歴史を直接体験しているかのような感覚を抱くことでしょう。
戸村裕行の情熱
戸村裕行は1982年に生まれ、写真のキャリアは多様です。大型海洋生物からマイクロ生物、さらには水中景観まで広範なテーマを扱ってきました。彼の作品は、単なる記録に留まらず、海の色彩や生物の躍動感を巧みに捉えており、多くのダイビング雑誌やカメラ専門誌に掲載されています。
『蒼海の碑銘』は、まさに彼のライフワークとも言えるプロジェクトの集大成です。太平洋戦争の遺産に対する彼の情熱と探究心は、単に海中の写真を撮影するだけでなく、歴史の教訓を次世代に伝える重要なメッセージとなっています。
本書は、162ページのA4サイズで、税込み2970円で販売されています。深海に眠る歴史の証人たちの姿を通じて、私たちが忘れてはいけない過去に思いを馳せる、素晴らしい一冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。戸村裕行のウェブサイトでは、さらなる彼の作品や活動についても確認することができます。興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。
戸村裕行オフィシャルウェブサイト