神田外語大学の遠藤美幸講師を中心とした執筆陣による新著『戦争のかけらを集めて―遠ざかる兵士たちと私たちの歴史実践』が、その刊行日として2024年6月12日を予定しています。この著作は、忘却の淵に沈む戦争体験を一つ一つ拾い上げ、未来に残すための架け橋を築こうとする研究者たちの挑戦を映し出しています。特に、本書は不戦兵士を語り継ぐ会の共同代表として活動している遠藤講師が企画し、戦争の経験を持たない世代にとっての新たな視点を提供します。
この書籍は、11人の著者たちによる多角的な視点から、戦争を語り継ぐ重要性とそれに伴う課題を探ります。戦友会のような歴史的な組織が直面する「断絶」や、メディアを通じての情報分析について、読み解くことが試みられます。戦争体験者がいなくなる未来に私たちは何ができるのか、という問いが本書の中心テーマでもあります。
目次は、プロローグ、「非体験者による存続の行方」、「元兵士をめぐるまなざしの交錯」、「残された言葉との対話」、そしてエピローグという5つのセクションから構成されており、各著者がそれぞれの専門分野からこの問題に取り組んでいます。特に注目すべきは、戦後70年が経過した日本社会において、非体験者がどのようにして戦争の歴史を伝え続けることができるのかを考察する部分です。
また、本書はただ歴史を振り返るだけでなく、埋もれた価値のある歴史経験を再評価し、未来への継承を模索する姿勢が見受けられます。過去の戦争が歴史として語られる時代に、どのような手段を講じていくのか、その道筋が示されています。
著者の遠藤美幸氏は、イギリス近代史やビルマ戦史の専門家であり、戦争についての記憶と記録の継承に熱心に携わっています。彼女は2002年から元兵士の戦場体験を聴き続けており、その活動が本書の根幹を成す要素となっています。彼女の言葉を通じて、私たちは戦争の持つリアリティとその重みを理解し、次の世代へとつなげる大切さを感じ取ることができます。
この本を通じて、戦争の加害者や被害者の視点、さらには現代社会に生きる私たちに何を投げかけるのか、思いをはせるきっかけとなるでしょう。新たな研究者たちによるこの挑戦は、私たちの記憶と歴史を結びつける重要な役割を果たすことでしょう。今後の展開にも注目が集まります。
書籍は、A5判の並製本で320ページ、価格は3520円(税込)。全国書店で発売される予定です。心に響く内容が詰め込まれたこの一冊を手に取り、戦争について考えてみる時間を持ってみてはいかがでしょうか。