第50回フローレンス・ナイチンゲール記章の受章者発表
5月12日、赤十字国際委員会が発表した「第50回フローレンス・ナイチンゲール記章」の受章者に、日本からは春山典子さん、紙屋克子さん、河野順子さんの三名が選ばれました。今回は17の国と地域から35名が受章し、特に日本は118名と世界で最も多い受章者を誇る国となっています。
受章者の紹介
春山典子さん
春山さんは群馬県に在住し、81歳。日本赤十字社群馬県支部で参事を務めていた春山さんは、1985年に御巣鷹山で発生した航空機墜落事故における看護活動が評価されました。生存者への救命活動や、遺体の捜索・検案において1000名以上の看護師を指揮し、現場の活動を統率しました。
彼女は、所定の看護業務を超え、遺族が故人に対して最後の別れを持てるよう、遺体の整復作業が注目されます。この創造的なケアは「整体ケア」と名づけられ、家族の悲しみを少しでも和らげるための努力でした。活動が終わった後も、彼女は事故を風化させないための講演活動を続け、事故の教訓や人道的原則を広めています。
紙屋克子さん
78歳の紙屋さんは、北海道出身で、日本ヒューマン・ナーシング研究学会の理事長を務めています。遷延性意識障害を持つ患者のために、彼女は新しい看護方法を確立。彼女の看護は意識障害患者を「植物状態」と捉えず、患者のニーズに応じた支援を行うことで、多くの患者に生活行動の再獲得を可能にしました。
また、看護を通じて家族の負担を軽くし、患者の意志を尊重するケアを持ち続ける彼女の姿勢は、業界内外で高く評価されています。紙屋さんは、看護の先駆者として、自己の経験を通じて多くの患者や家族を支えてきました。
河野順子さん
河野さん(81歳)は、栃木県に住んでおり、一般社団法人栃木県訪問看護ステーション協議会の会長を務めています。彼女は病院を退院後も患者が地域で尊厳ある生活を送れるよう、多職種連携と地域の受入れ体制を構築する活動に尽力してきました。
退院計画の策定を主導し、在宅医療の重要性を訴え、患者と地域住民が互いに支え合う社会作りに貢献。ヤング・ケアラーの育成や地域とのネットワーク構築も目指し、地域全体で患者の生活を支える基盤を作る行動が評価されています。
フローレンス・ナイチンゲール記章について
フローレンス・ナイチンゲール記章は、赤十字が世の中で顕著な看護活動を行った看護師を表彰するために設立されました。1920年5月12日に初回の授与があり、以降は隔年で受章者が発表されます。記章は、看護業務における献身的な活動の証として、特に戦時や災害時における看護業務の重要性を示し続けています。
日本は受章者数が最も多く、今回の受章者3名の業績もその一端を担っています。授与式は年内に行われる予定で、皇后陛下からの授与が恒例とされています。具体的な日程は改めて発表されるとのことです。これにより、看護師たちの献身的な努力が再評価され、今後も医療現場の重要な役割として受け継がれていくことでしょう。