最近放送された『ABEMA Prime』では、事件や事故の被害者が美談として扱われることへの疑問が提起されました。特にプロスケーターの安藤美姫さんは、亡き父とのエピソードを交えながら報道の在り方について考えを述べました。
番組では、2012年に大阪で発生した水難事故が取り上げられました。この事故では、通行中の男性が溺れかけていた中学生を救おうとしましたが、残念ながら男性と中学生一人が命を失う結果となりました。メディアはこの事故を報じる際、救助者を「勇敢」「責任感の強い人」として称賛する一方で、再発防止策やこの問題についての根本的な議論が不足しているとの指摘がありました。
亡くなった男性の妻のインタビューでは、彼女は夫の死が美談として消費されたことに違和感を覚え、「再発防止につながる報道がなかった」と悔しさを語りました。彼女の意見は、遺族や被害者の視点がメディアにおいて欠けているという問題を浮き彫りにしています。このように、犠牲者の人となりを強調することで、本来報じるべき問題が軽視されてしまうことが多いのです。
これに対し、安藤美姫さんは自身の体験を基に「故人を美談にする必要はない」と強く感情を込めて伝えました。彼女は小学生のころに父親を事故で失った経験があり、18歳でオリンピック出場が決まった際に記者から「お父様のために滑るのか」と問われたことを明かします。「父の存在が私のスケートに影響を与えたわけではないのに、なぜそんな質問をされるのか」と疑問を持ったといいます。
安藤さんは、「遺族の心情を考えれば、故人の死を美談にしてしまうのは望ましくない」と警鐘を鳴らしました。彼女のこれまでの経験から、メディアは亡くなった方の人となりを称えることだけに重点を置くのではなく、もっと深い問題意識を持つべきだと強調しました。
この放送は、報道が果たすべき責任とは何かを再考させる内容でした。『ABEMA Prime』は毎週月曜から金曜の夜9時から生放送されており、さまざまなバックグラウンドを持つ論客が集まり新しい視点での議論を展開しています。安藤美姫さんや他のメンバーたちは、視聴者にとって重要な情報を提供し、今の時代に即した議論を行おうとしています。
このように、報道のスタンスは日々変化していますが、何が本当に重要なのか、そして遺族の心情をどう尊重できるのか。これからのメディアがその責任を果たすためには、もっと多面的なアプローチが求められます。彼女の言葉を受け、メディアの報道姿勢に対する注目が高まることを願いたいです。