超少子高齢社会に立ち向かう病院経営の課題と展望
一般社団法人日本能率協会(JMA)は、近年の超少子高齢社会における病院経営の実態を明らかにするため、2024年11月8日から29日まで全国の病院を対象に『病院経営課題の実態調査(2024)』を実施しました。この調査では、病院が直面する経営の課題、特にデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状や高齢者がピークを迎える2040年を見据えた取り組みなどについて探りました。
調査結果の概要
調査対象は約8,141の病院で、有効回答は223施設に上りました。これに基づいて浮かび上がったのは、病院の経営環境が非常に厳しいことを示す数々のデータです。特に、コロナウイルスの影響を受け、外来・入院診療の収入が戻らない病院が約40%を占めています。また、増加する人件費や光熱費、材料費が経営の圧迫要因として指摘されています。
人件費の高騰と職員不足
現在、多くの病院が人件費以外の経費増加にも直面しており、これを理由に「職員確保が難しい」と感じている病院が約50%に達しています。さらに、医師や職員不足は、時間外労働の増加を招き、周辺の人材派遣手数料の高騰にも繋がっています。これらは、今後の経営戦略にとって大きな挑戦です。
DXの導入状況
調査によれば、DXを重要視する病院は80%以上に上るものの、実際に積極的に取り組んでいる病院は20%以下に留まります。さらに、DXに関する取り組みから得られた成果を実感している病院は、わずかに30%程度という体たらくです。これは、DXの効果的な導入が難しい実情を如実に表しています。
未来に向けた対策の不足
2040年までの高齢者増加に対する具体的な対策を進めている病院はわずか13%にとどまり、87%の病院が何らかの対策を講じていないか、計画段階に留まっています。このことは、予測される社会構造の変化に対する病院の準備がいかに遅れているかを示しています。
結論
本調査の結果から、病院経営が直面する課題は多岐にわたり、加速する少子高齢化社会への対策が急務であることが浮き彫りとなりました。バックグラウンドに存在する社会的な要因とともに、病院経営の在り方を見直す必要があります。今後、これらの課題をどう解決していくかが、病院が持続可能な経営を実現する鍵を握っています。