東京下町のヒ素問題を解明した研究チームの成果
東京の下町、有楽町層には、自然由来のヒ素が含まれていることが以前から知られていました。最近、国立大学法人東京農工大学大学院農学研究院の橋本洋平准教授を中心に、国立研究開発法人 産業技術総合研究所の研究チームが、この地層からヒ素がどのように溶出するのかを解明するための地盤ボーリング調査を実施しました。
この調査により、研究者たちは有楽町層からヒ素が土壌の溶出量基準を超えていることを確認しました。特に、ヒ素がフランボイダルパイライトという、ラズベリーのような形状を持つ黄鉄鉱に局在していることが分かりました。この発見は、ヒ素がいかにして地層から溶出するかを解明する重要な手がかりとなります。また、有楽町層に含まれるヒ素は、鶏冠石や硫砒鉄鉱に似た複数の化学形態が存在していることも明らかにされました。このことから、フランボイダルパイライトがヒ素の集積とその溶出に深く関わっていることが示されました。
研究の成果は、今後の大規模なインフラ工事において発生する建設発生土の適切な対処や処分を考える上で非常に重要です。特に、都市部においてのヒ素汚染の管理に役立てられることが期待されています。建設現場でのヒ素の取り扱いに関するガイドライン作成や、新たな技術の開発にも寄与するでしょう。
この研究成果は、2025年2月15日にJournal of Hazardous Materialsに掲載予定ですが、すでに12月4日にオンラインで公開され、広く注目を集めています。論文の詳細は、
こちらからご確認いただけます。
この研究は、東京の地下構造を理解し、環境問題に取り組む大きな一歩となることでしょう。都市の持続可能な発展を図るためには、こうした科学的知見が必須です。環境性の高い問題を抱えた東京において、今後の研究とその成果が、多くの人々の生活に良い影響を与えることを期待しています。
参考文献
本研究に関する詳細なプレスリリースについては、
こちらで確認できます。