炭素材料の謎解明
2026-07-01 17:01:05

原子レベルで解明された炭素材料の欠陥の謎―次世代材料の精密設計への道

炭素材料の謎が原子レベルで解明



千葉大学大学院工学研究院の山田泰弘准教授を中心とする研究チームが、長年解明されていなかった炭素材料の欠陥由来の「謎」ピークの起源を、原子レベルで明らかにすることに成功しました。この研究成果は、次世代材料の精密設計に向けた新たな道筋を示しています。

研究の背景


炭素材料は、航空宇宙工学や燃料電池、断熱材など様々な分野で欠かせない存在です。これらの材料の性能は、その構造的特性、特に欠陥の種類や分布に大きく依存しています。これまで、炭素材料の分析には主にラマン分光法やX線光電子分光法(XPS)が用いられてきましたが、構造の多様性や解釈の不一致から特定のピークを局所的な化学構造に正確に関連付けることが非常に困難でした。そのため、原子レベルでの複雑な欠陥構造は長年にわたり「ブラックボックス」とされていました。

研究成果のポイント


研究チームは炭素繊維をモデルとして用い、34種類のグラフェンモデルを構築し、実験的評価と先進的なスペクトル計算を通じて構造解析を行いました。以下の二点が主な発見です。

1. XPSにおける285 eVピークの由来
 これまでこのピークはsp3混成炭素に起因すると考えられていましたが、実際には七員環や八員環の空孔欠陥を含む三つの環に囲まれた炭素原子から生じていることが判明しました。
2. ラマン分光法における謎のピークの起源
 1500〜1550 cm⁻¹範囲のピークが、近くにある非六員環や環状エーテルの酸素含有官能基の影響を受けた六員環内のC=C結合に由来することが解明されました。

これらの成果により、炭素材料の構造解析がかつてない精度で行えるようになりました。

今後の展望


本研究により、さまざまな欠陥がラマンおよびXPSスペクトルに与える影響が明確になり、分光データを正確に解釈するための枠組みが構築されました。長年の謎とされていた特定のピークの起源の理解が進むことで、炭素材料の機械的、熱的、電気的、化学的特性を向上させるための基盤が整いました。

今後は異なる種類の欠陥構造についても研究を進め、より複雑な材料の利用や新たな応用が期待されます。特に航空宇宙工学や環境用途へ向けた、次世代炭素材料の精密なエンジニアリングが進むことでしょう。

論文情報


この研究成果は、2026年6月29日に『Journal of Materials Science』にて公開されました。文献情報は次の通りです。

  • - タイトル: Unveiling origins of defect peaks in carbon materials by analyzing oxygen and non‑hexagonal rings in isotropic pitch‑based carbon fiber using Raman, infrared, X‑ray photoelectron spectroscopy, and density functional theory calculations
  • - 著者: Y. Yamada, M. Morimoto, T. Senda, K. Kondo, S. Sato, S. Kubo, T. Sogabe
  • - DOI: 10.1007/s10853-026-12911-9

この研究がもたらす新しい視点が、炭素材料の利用可能性を一層広げることでしょう。


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