NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクトの挑戦
NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクトが2025年4月より新卒社員を正規雇用することを決定した。この取り組みは、「できないをできたに変える」という理念のもと、障がいのある人もない人も共に楽しめるビーチの実現を目指すものであり、社会の多様性を尊重した活動として注目されている。
こうしたNPOの新卒採用は日本国内で非常に少数派であり、その背景にはNPOの資金基盤や人材確保の難しさがある。内閣府の調査によれば、特に小規模なNPO法人の中には有給常勤職員を持たない法人が3割以上存在し、正規雇用の枠を広げることが困難な現状が浮き彫りになっている。
NPOの新卒採用は難しい
また、一般的に新卒者が就職先に求める条件としては「安定」「給与」「キャリア形成」が挙げられ、社会貢献性を重視する学生は約10%にとどまる。これにより、多くの新卒者がNPOを選択肢として考えることが少ないのが現実だ。特に理学療法士やライフセーバーのような専門職がNPOに参画することは、依然として特異な例となっている。
日本のNPOの現状と未来
厚生労働省のデータを見ても、日本の非営利セクターは国際基準に比べてまだ発展途上であり、その比率は4.2%。これに対し、アメリカでは約9%、イギリス、フランス、ドイツなども5〜6%を超えており、まだまだ成長の余地があると言える。この背景が、新卒にとってのNPOの魅力を減少させている要因の一つである。
社会課題に向き合う新卒採用の意義
須磨ユニバーサルビーチプロジェクトが新卒採用に踏み切った理由は、意欲的な若者がもたらす新たなアイデアを取り入れることである。さらに、組織の中長期的な成長を促すために、新たな人材育成にも力を入れたい考えだ。若い世代が集まることで、より多様な事業展開が可能となり、NPOとしての可能性も拡大するだろう。
新卒メンバー柴田祐希の想い
新卒で採用された柴田祐希さんは理学療法士として、またライフセーバーとしての経験をもとに、「全ての人々が自由に海を楽しむことができる環境をつくりたい」と語る。海が障がい者にとってのバリアになることが多い中、彼はその状況を変えたく、ユニバーサルビーチの実現に向けて奮闘している。彼の言葉には、障害を持つ方々を含むすべての人が安心して楽しめる場所の重要性が込められている。彼のような志を持つ若者の力が必要とされている。
未来に向けた取り組み
また、須磨ユニバーサルビーチプロジェクトは、全国での「ユニバーサルビーチ」普及を目指しており、今年度56ヶ所で活動を展開予定である。さらに、2035年には全47都道府県でプロジェクトを展開し、最終的にはすべての人に挑戦の場を提供することを目指している。
このように、NPOとしての多様性を兼ね備えた企業が新卒を採用することで、より広範な社会課題解決に寄与することを期待したい。障がいの有無にかかわらず、海辺での新しい「できた!」を増やしていくための挑戦は、今後ますます重要になっていくだろう。