アネモイ社が鉱石船に風力推進装置を搭載
アネモイ・マリン・テクノロジーズ(UK)は、NSユナイテッド海運(東京)に風力補助の推進装置、ローターセイルを提供し、2025年10月16日に鉱石船「NSU TUBARAO」への取り付けを完了します。この技術は、船舶の燃料消費量やCO2排出量を約6~12%削減することが期待され、海運業界における環境への配慮を示しています。
プロジェクトの概要
このプロジェクトでは、5基のローターセイルが設置されます。これにより、日本の船主が所有する船舶に対するレトロフィット(既存の機器に新しい技術を組み込む手法)による搭載数が過去最多となります。このプロジェクトの成功は、古くからの船舶技術に新たな風をもたらし、環境負荷の低減へ向けた一歩を踏み出しました。また、アネモイ社のローターセイルを搭載した船舶の累計総トン数も160万重量トンを超えることになります。
ローターセイルの仕組み
ローターセイルは、船舶の甲板上に大型の円筒状の部品を設置し、これを回転させることで生じる気流と圧力差を利用して推進力を生み出す仕組みです。この方式は、従来の帆とは異なり、効率的に推進力を生成し、風力を最大限に活用することができます。近年の環境問題への意識の高まりから、ローターセイルはその注目度を増しつつあります。
アネモイ社のCEO、クレア・アームストンは「低排出型の海運を実現するためには、風力が重要な推進手段であることを市場が認識している」と述べ、NSUやヴァーレ社との協力を通じてこの技術のさらなる発展と効果を実証する意向を示しました。
船舶の特徴
「NSU TUBARAO」は、Valemax/VLOCとして知られる超大型鉱石運搬船の一つで、全長は361.0m、幅は65.0m、喫水は23.0mです。この船は、399,717トンの貨物を載せることができる能力を持ち、世界最大級の船舶として位置づけられています。
NSUの展望
NSUの常務執行役員、藤田透氏は「燃費削減効果を最大化するために、ローターセイルと高度なシステムを融合させた。この取り組みは、当社の約束した効率的な海運の実現に向けたものです。」と語りました。
NSU TUBARAOは、2025年10月26日に海上試運転を開始し、同月29日に試運転を終了する予定です。これにより、風力推進装置の効果や実用性がさらに評価されることが期待されています。
アネモイ社について
アネモイ・マリン・テクノロジーズは、2007年に設立され、風力推進システムの開発を行う企業です。世界に数社しかないローターセイルを提供する企業の一つとして、近代的な海運技術の普及に貢献しています。2025年現在、25基のローターセイルを6隻の船舶に搭載しており、その実績は非常に大きなものとなっています。
このプロジェクトは、アネモイ社とNSU、さらにはヴァーレ社の協力によるもので、海運業界の脱炭素化に向けた大きな一歩とされています。先進的な海運の未来に向けた挑戦が、ここから始まります。