次世代車載ネットワークの通信方式とその革新
自動車業界は、電子制御化が急速に進展しています。特に、電動車両や運転支援技術の発展が進む中、車両に搭載される電子機器の数は増加しています。それに伴い、車載ネットワーク上でのデータ通信量も飛躍的に増加しています。
現在の通信方式とその限界
車載ネットワークのデータ通信に広く使用されているのが、CAN(Controller Area Network)という通信方式です。この方式は、最大500Kbpsの速度でデータを送信することができますが、次世代の運転支援システムや自動運転車両の進化に対しては速度の限界が問題となっていました。
そうした中で、改良型のCAN FD(Flexible Data-rate)が登場しました。CAN FDでは、最大8Mbpsという高速なデータ通信が可能となり、次世代の車載ネットワークの基盤として期待されています。しかし、高速化に伴い新たな課題が発生しました。その一つがリンギングという現象です。
リンギングとは?
リンギングは通信中に信号品質が劣化する現象です。同じネットワーク内でも、異なるインピーダンスを持つ部分が存在し、ここで電気信号が反射してしまうためにノイズが発生し、結果的に信号が歪むのです。従来のCANでは500Kbpsという速度だったため、この影響はそれほど問題になりませんでしたが、CAN FDでの通信が高速になると、リンギングの影響が顕著になり、データ通信の信頼性に問題が生じました。
低減技術の開発
このような背景の中、日立オートモティブシステムズでは、リンギングを抑えるための新たな技術を開発しました。この新技術は、通信速度に応じて最適な経路で電気信号を送信する中継回路方式です。この方法では、中継回路が信号の速度に応じて経路を切り替えることができ、高速と低速の信号を異なる経路で送ることが可能になります。それにより、反射ノイズの影響を軽減し、リンギングを従来よりも約37%低減することに成功しました。
この技術は、CAN FDによる車載ネットワークのデータ通信をより信頼性の高いものへと進化させるものです。交通の安全性向上や自動運転技術の実用化が進む現在、非常に重要な進歩と言えます。
今後の展望
これにより、日立オートモティブシステムズは、自動車メーカーが進める先進的な安全運転技術や自動運転車両の普及に向けて、さらなる貢献をしていく予定です。この技術の詳細については、2017年春季大会において発表が予定されています。
発表概要
- - 日時: 5月25日(木) 9:30~11:35 セッション番号44
- - 演題: CAN FDのリンギングを低減する中継回路
- - 場所: パシフィコ横浜 会議センターメインホール 3F
自動車業界の変革が進む中、低減技術はますます重要な役割を果たすことが期待されています。この新技術が、未来の車両にどのような影響を与えるのか、注視したいところです。