高齢者の幸福度向上を促す「推し活」の新たな研究成果
サントリーウエルネス株式会社の生命科学研究所が、京都大学と大阪公立大学との共同研究を通じて、高齢者施設における利用者の幸福度向上を目的とした「推し活」の取り組みについて新たな知見を得ました。この研究は、2023年11月21日から23日に開催される「第43回日本認知症学会学術集会」で発表され、業界内外から高い関心を集めています。
研究の背景と目的
「Be supporters!」という活動名で知られるこのプログラムは、高齢者施設の利用者が好きなスポーツチームを応援することで、充実感や生きがいを見出すことを目的としています。特に、要介護状態にある高齢者が「推し活」に参加することにより、どのように彼らの幸福感が向上するのかを探ることに主眼が置かれています。
この研究は、これまでの健康食品や美容商品に関する研究をもとに、高齢者のウェルビーイングを深く理解し、実生活における影響を解明することを目指しています。
研究方法と対象
調査は「観察研究」という方法を採用し、高齢者施設でのJリーグの試合観戦に参加している51名の利用者や職員、またその家族を対象にしています。具体的には、兵庫県神戸市の「オリンピア兵庫」と富山県富山市の「天正寺サポートセンター」の2つの施設で実施されています。学術的な調査が行われることで、普段は介護を受けている利用者がどのように「推し活」を通じて社会参加を果たし、自らの幸福を感じているのかが詳細に探求されることになります。
研究の結果
事前の調査結果として特に注目されたのは、「推し活度」と「生きがい意識尺度」の関連性です。つまり、応援対象が自分に与える影響が明らかになり、推し活を通じて実際に利用者の生きがいが向上している現象が報告されています。利用者の中には、推し選手のために自らの行動を変化させ、他者とのコミュニケーションを楽しむ変化が見られたという報告も寄せられています。
具体的には、90代の女性が利用している施設では、以前はコミュニケーションに難しさを抱えていましたが、活動参加により他の利用者との交流が活発になり、周囲に笑顔と元気をもたらす存在へと変わったという事例があります。また、80代の男性は、活動を通じて他の利用者を手伝うようになり、社会的なつながりを持つ喜びを感じるようになったことが示されています。
このように、推し活はただのスポーツ観戦を超えて、コミュニティ内での重要な役割を果たしていることが証明されました。
今後の展望
サントリーウエルネス株式会社は、今後も「Be supporters!」の活動を通じて、高齢者の幸福感をさらに深める研究を続けていく考えです。「健康寿命」だけでなく、「幸福寿命」を大切にする価値観が今後のサービス展開に活かされ、人生をより豊かにする方法を探求します。利用者やその周囲の人々にポジティブな影響を与えるこの取組みは、今後もどのように発展していくのか注目が集まります。