次世代トンネル施工を実現する自動化技術の革新
鹿島建設が推進する次世代山岳トンネル自動化施工システム「A⁴CSEL for Tunnel」が、岐阜県飛騨市の神岡試験坑道で開発が進められています。このシステムは、トンネル施工における様々な課題を解決するために設計されたもので、特に発破後のアタリ判定を自動化する「アタリガイダンスシステム」が注目されています。
発破後のアタリ判定の自動化
今回共同開発されたアタリガイダンスシステムは、ブレーカに搭載した3Dレーザスキャナによって切羽形状のデータを取得し、アタリを定量的にかつ自動的に判別します。この技術により、作業者が切羽近傍に立つ必要がなくなり、安全性の向上が期待されます。これまでの方法では熟練技能者が発破後の岩盤を判別し、ブレーカのオペレータに指示を出す必要がありましたが、新システムではオペレータが遠隔操作室から一人で行えるようになります。
建設業界の課題への対応
建設業界では、熟練技能者の不足や高い労働災害率、低い生産性といった課題が深刻です。特に山岳トンネル工事は、これらの問題が顕著に表れる領域でもあります。このため、鹿島は「A⁴CSEL for Tunnel」を立ち上げ、掘削作業を6つのステップに分け、各工程で使用する重機を自動化し、全体を一元管理するシステムを開発しました。この取り組みは、トンネル工事の安全性と生産性を同時に向上させるための重要な施策です。
システムの仕組み
アタリガイダンスシステムでは、3Dレーザスキャナが切羽の形状をスキャンし、そのデータをもとに3Dモデルを生成します。さらに、事前に登録したトンネル設計断面のデータと重ね合わせて解析することで、高精度なアタリ判定を行います。この技術によって、従来は2名必要だったアタリ取りの業務がオペレータ1名で実施可能になり、作業効率が大幅に向上します。また、スキャナには防護カバーと免震装置が設置されており、さまざまな災害からも保護されています。
今後の展開と展望
今後は、アタリ判定の迅速化と精度向上を追求し、さらなる技術革新を目指します。また、遠隔操作の精度向上にも取り組む計画です。鹿島建設は、山岳トンネル工事における作業の自動化を進め、安全性と生産性を向上させることを目指しています。
神岡試験坑道の概要
このプロジェクトは岐阜県飛騨市に位置し、トンネル掘削延長は321.3メートル、掘削断面積はアプローチ部が43.9平方メートル、自動化施工試験部が73.5平方メートルとなっています。これにより、革新的な施工技術が実現し、建設業の未来を切り開くことが期待されています。