5Gによるイノベーション促進に向けた企業の取り組み
2020年3月に商用サービスが開始された5G。この新たな通信技術は、経済成長と社会問題解決を目指す「Society5.0」の実現を期待させています。5Gは、従来のスマートフォンを基盤としたセミコネクトの状態から、モノが常に通信し合うフルコネクト社会へ移行することが予測されています。この技術は、多種多様なビジネスチャンスを提供し、企業の戦略にも大きな影響を与えています。
調査の目的
この背景を踏まえ、5Gを活用しイノベーションを推進する企業についての調査を行いました。主に以下の3つの観点で企業の動向を把握することを目的としました。
- - (1) 5Gを活用した事業の開発意向
- - (2) 通信キャリアとの協業意向
- - (3) 規制への理解度
調査結果の概要
調査の結果、全体の約1割の企業が「イノベーション重視型」であり、これらの企業は独自に事業リスクを受け入れ、5Gを活用してサービスを高度化したいと考えています。一方で、残る企業は「競争重視型」であり、既存事業の効率性向上に注力していることが明らかになりました。
ビジネスモデルの変革
イノベーション重視型企業は、通信事業の規制が複雑であることを認識しつつも、5G技術を活用した新たなビジネスモデルの導入に対して前向きな姿勢を示しています。これにより、通信キャリアとのレベニューシェアやジョイントベンチャーへの参入意欲も高まっており、5Gを契機に各企業のイノベーションが加速する可能性が示されています。しかし、規制や制度に関してイノベーション重視型企業が感じている課題については、競争重視型企業の理解がまだ浅い状況が浮き彫りとなりました。
イノベーションの停滞リスク
このため、先行する企業が直面する課題が解決されない限り、後続企業のイノベーションが停滞する恐れがあります。5Gの恩恵を最大限に引き出すためには、企業間の共同戦略だけでなく、規制環境に対する理解を深めることが必要不可欠です。
調査の詳細
この調査は慶應義塾大学大学院のクロサカタツヤ特任准教授とボックスグローバル・ジャパンによって実施され、全15問から構成されるアンケートを通じて、120社の企業に配布されました。調査の結果、8業種36社から有効回答を得ることができました。
このように5Gの導入は、多くの企業にとって変革のチャンスとなる一方で、規制や制度的課題も抱えています。企業はこの点を踏まえながら、今後のビジネスモデルの進化を追求する必要があります。