2021年度 低層住宅供給動向調査の結果と今後の展望
株式会社住宅産業研究所が実施した2021年度の低層住宅供給動向調査の結果が発表されました。この調査は2002年度から始まり、全国の47都道府県を対象に毎年行われており、その目的は企業別の住宅供給動向を明らかにすることです。特に、住宅市場における新型コロナウイルスの影響を受けながらも、ここ数年の変化を反映したデータが重要視されます。
新設住宅着工戸数の状況
国土交通省によると、2021年度の新設住宅着工戸数は86万5,909戸に達し、前年比で6.6%増加しています。これは2020年度に比べて回復基調を示していますが、過去の水準に照らし合わせると、まだ十分な回復とは言えません。この状況からも分かるように、景気回復の波に乗り切れていないという課題があります。
建築確認申請の提出社数
住宅産業研究所による調査では、2021年度に建築確認申請を1棟以上提出した住宅事業者の社数は29,102社で、これが前年から1,156社減少したことが判明しています。着工戸数が増加する中で、住宅事業者数が減少するという逆説的な現象が見受けられ、これはコロナ禍の影響で元請け企業が減少してきたことによるものでしょう。実際、2020年度と比較して引き続き減少傾向が続く中、これまでの住宅供給構造が変わりつつあると分析されています。
供給規模別の動向
調査によると、年間の着工棟数に応じた企業の分布は次のようになっています:
- - 年間500棟以上着工の企業は48社(前年比+6社)
- - 年間200~499棟着工の企業は100社(同+10社)
- - 年間100~199棟着工の企業は189社(同−7社)
- - 年間20~99棟着工の企業は1,833社(同+67社)
- - 年間5~19棟着工の企業は5,555社(同−110社)
- - 年間1~4棟着工の企業は21,355社(同−1,122社)
このように、低層住宅市場全般では、供給規模の大きい企業が増加している一方で、20棟未満の規模で供給していた中小工務店が減少傾向にあります。これによって、業界全体での供給体制に変化が顕著に見られるようになりました。
持家戸建住宅の状況
持家戸建住宅に絞った分析では、2021年度において、23,977社が1棟以上の住宅供給を行っており、年間20棟以上を供給する企業が増加しました。しかし、年間20棟未満の供給企業は減少しており、特に零細企業の淘汰が進んでいる様子がうかがえます。これは業界全体の健全性や競争力に影響を及ぼす要因となるでしょう。
総括と今後の展望
2021年度の調査結果は、新型コロナウイルスという未曾有の影響が住宅供給業界に与えた変化を示すものであり、今後もこの傾向が続く可能性があります。資材価格の高騰やインフレの影響が見込まれる中で、住宅事業者数が減少していく可能性も無視できません。住宅市場の動向を注視しつつ、さらなる改善策が求められるでしょう。
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会社概要
株式会社住宅産業研究所は、1976年に設立され、住宅関連分野に特化したシンクタンクとして活動しています。40年以上にわたる実績をもとに、マーケティングレポートや月刊誌の発行、各種セミナーの開催など多岐にわたる事業を展開しており、業界の最新動向を常にリサーチし続けています。