2023年抗菌薬使用量の増加とその背景
医療の現場で抱える大きな課題、それが薬剤耐性(AMR)です。その対策として策定されたアクションプランが改訂され、2023年より新たなデータが公開されました。このデータによれば、2023年の抗菌薬使用量は2020年と比べて17.5%も増加したことが明らかになりました。
全国抗菌薬販売量調査の概要
AMR臨床リファレンスセンターは2024年8月6日に、全国の抗菌薬販売量を調査したデータを発表しました。このデータでは、住民1,000人あたり1日あたりの抗菌薬使用量(DID)が11.96と算出され、昨年の9.78から大幅に増加しています。特に注目すべきは、2020年の水準である10.18からの増加です。
抗菌薬の種類別に分類すると、特に広域抗菌薬として削減対象となっている内服第三世代セファロスポリン系やフルオロキノロン系が増加していることが分かります。
- - 内服第三世代セファロスポリン系薬:1.94DID
- - 内服マクロライド系薬:3.45DID
- - 内服フルオロキノロン系薬:2.07DID
- - 注射カルバペネム系:0.06DID
AMR対策アクションプランの意義
わが国は2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020」を策定し、2023年にはその内容が更新されました。新たなアクションプランでは、抗菌薬の使用量を2027年までに人口1,000人あたり15%減少させる目標が掲げられています。具体的には、経口第三世代セファロスポリン系薬の使用を40%、フルオロキノロン系薬を30%、マクロライド系薬を25%、注射カルバペネム系薬を20%削減することが求められています。これらの指標は、薬剤耐性のリスクを軽減するための重要な取り組みです。
COVID-19の影響と今後の展望
2020年以降、COVID-19の影響によって急性気道感染症の罹患率が低下し、診療所を受診する患者が減少しました。これにより、抗菌薬の使用量も減少したと考えられます。しかし、2023年に入って行動制限が解除されると、抗菌薬の使用が再び増加しました。この状況は、いくつかの海外の報告と異なり、2020年以前の使用量に戻ることはありませんでした。
今後は、さらなる調査を進めるとともに、抗菌薬の適正使用を推進するための取り組みが求められます。特にWHOが掲げる“Access”の抗菌薬の割合を60%以上にするための努力は、引き続き重要です。これらのデータをもとに、私たちは医療現場での抗菌薬の使い方を見直し、より効果的な体制を築いていく必要があります。
まとめ
抗菌薬の使用量が増加する中、薬剤耐性対策はこれまで以上に重要な課題となっています。新たに公開されたデータを基に、適正使用を促進し、抗菌薬による医療の品質向上を図ることが求められます。これからの取り組みが、未来の医療にどのような影響を及ぼすのか、私たち一人ひとりが関心を持って見守る必要があります。