(株)プリンテックは、次世代半導体パッケージ用に特化した高性能樹脂「HR樹脂」を開発しました。この樹脂は高耐熱性、低熱膨張特性、低誘電特性を持ち、独自の技術によって溶剤への溶解度が従来の7倍にもなっています。これにより、他の樹脂との複合化が容易になり、半導体の技術が求める高い性能要件に応じた柔軟な対応が可能となるのです。
開発の背景と目的
現代社会ではAIやIoTの普及が進み、半導体の高性能化が急務とされています。これに伴い、デバイス間のワイヤーが複雑化し、マルチチップ化が普及しています。しかし、マルチチップ化に伴い発熱量が増加するため、封止材料には高耐熱と低熱膨張が求められているのです。
プリンテックグループでは、「地球環境」と「ウェルネス」を重要視し、持続可能な社会の実現に向けた材料開発を行ってきました。その中で、高性能化する半導体に応じた材料の重要性が増していると考え、この新しい樹脂の開発に至りました。
HR樹脂の特性
HR樹脂は、マレイミド系樹脂を基にしており、溶剤への溶解度が70%に達するという特異な性質を持っています。従来の樹脂と比べ、エポキシ樹脂など他の機能性樹脂との複合化が容易になり、様々な特性を持つ樹脂との組み合わせが可能になります。これにより、最新の高性能半導体封止樹脂やパッケージ基板に求められる多様な仕様に応じることができるのです。
特に高周波用途においては、低誘電正接を実現したコア基板の開発が進められています。HR樹脂を用いることで、高価な特殊ガラスクロスを使わずとも、優れた性能を持つ基板が得られることが確認されています。さらに、データセンター向けの高性能コンピュータ用途においても、低熱膨張係数がアピールポイントとなり、従来の13ppm/℃から6.6ppm/℃へと改善されています。
今後の展望
HR樹脂は、既に多くのユーザーにサンプル提供が行われ、様々な製品への採用が進行中です。今後もユーザーからのフィードバックをもとに仕様調整を行い、半導体業界のさらなる高性能化に寄与していく計画です。これにより、スマート社会の実現に向けても大きな影響を与えることが期待されています。