SBテクノロジーと日本ゼオンが新しいマテリアルズ・インフォマティクスを探究
SBテクノロジー株式会社(以下、SBT)と日本ゼオン株式会社(以下、ゼオン)は、最近、秘密計算技術を活用した新しいマテリアルズ・インフォマティクスの実証実験を始めました。この取り組みは、双方が蓄積してきたデータを基に、より高い精度を持つAIモデルの開発を目指しています。
実証実験の背景
ゼオンは、2021年から自社の実験データを整え、AIによる物性予測の開発を進めてきました。しかし、自社だけのデータでは不十分で、予測精度の向上に問題を抱えていました。さらに、顧客企業が秘匿情報を含むデータをやりとりすることは難しい状況でした。
一方、SBTはクラウドとAI技術を生かして、顧客との共創型デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めており、その過程で異なる企業間のデータ連携が可能な秘密計算技術に着目しました。この新技術は、企業間でデータを安全に共有する手段としての可能性を持っており、ゼオンの課題解決にもつながると期待されています。
実証実験の概要
今回の実証実験では、ゼオンが開発した物性予測AIを基に、秘密計算技術を利用してAIの学習データを秘匿化します。これにより、データを提供する側以外にはアクセスできない環境が整えられます。推論のクエリと結果は、専用のWebシステムを通じて利用者にのみ届く仕組みです。この仕組みにより、情報が漏れず、安心してデータを共有できる環境が整うことが期待されています。
実証の期間は2024年の12月末までを予定しており、SBTがシステム全体のアーキテクチャ設計を担い、ゼオンはゴム業界に特化した専門知識を活かしてアプリケーションを開発します。これにより、異なる企業間での協力が進む可能性が高まります。
期待される効果
この取り組みにより、研究開発のスピードと効率が向上することが見込まれています。従来の手法では、研究者や技術者が過去の経験に基づいて配合条件を試行錯誤していたのが、AIによってそのプロセスを短縮できる可能性があります。
さらに、この技術が普及すれば、他の産業にも応用が可能になるでしょう。データの秘匿性を維持しながら、さまざまな企業が協力し合うことで、新たな製品開発や利益の創出が見込まれます。
今後の展望
SBテクノロジーは、Zeoングループ内でこの秘匿化された物性予測AIシステムの業務利用を進めるとともに、企業がデータを安全に活用できる方法を提供することを目指しています。これにより、さまざまな業界の課題解決に貢献することが期待されています。
このように、SBテクノロジーと日本ゼオンの連携は、マテリアルズ・インフォマティクスの新たな局面を切り開くものとして注目されています。今後の進展に、業界全体が期待しています。