衛星誘導式水中ドローンによるブルーカーボン計測プロジェクト
神奈川県に本社を置く一般社団法人BlueArchは、慶應義塾大学と連携し、衛星誘導式水中ドローンと画像解析AIを用いたブルーカーボン計測の新たな手法を実証するプロジェクトを発表しました。この取り組みは、2025年5月30日より江ノ島や城ヶ島を対象に行われる予定で、藻場の保全やブルーカーボンクレジット認証の申請に必要なデータを効率的に収集することを目指しています。
背景と目的
海藻の繁茂し複雑な生態系を形成している藻場は、魚介類の産卵場や成育場として重要な役割を果たしています。また、CO₂を吸収し貯蔵する「ブルーカーボン生態系」としても注目されています。しかし、近年の地球温暖化の影響で神奈川県内の藻場は急激に減少しており、その保全が求められています。特に1990年から2022年にかけては約53.7%も減少してしまったのです。
この状況を改善するためには、ブルーカーボンクレジット制度の利用が不可欠です。この制度は、海藻が吸収したCO₂を定量化し、取引可能なクレジットとして認証を受けることができる仕組みですが、現状では手間がかかり、普及が進んでいないのが実情です。そこで、BlueArchは水中ドローンを利用して、より手軽にブルーカーボンの調査ができる方法を開発しました。
プロジェクトの実施方法
このプロジェクトでは、藻場保全に取り組むNPO法人や漁業協同組合の協力を得て、実証フィールドでのブルーカーボン量調査から「JブルークレジットⓇ」の認証申請までを実施します。具体的な流れとしては、まず衛星誘導式水中ドローンを使用して調査対象海域からデータを取得します。次に、AIによる画像解析を通じて藻場の種類や被度を判定し、CO₂吸収量を算定します。最終的に得られた調査結果はJBE(ジャパンブルーエコノミー技術研究組合)に提出し、認証を申請します。
技術的アプローチ
本プロジェクトでは、BlueArchが取得した特許技術である衛星誘導式水中ドローンを用いて、従来の方法よりも高い精度でブルーカーボンの測定を行います。このドローンは自律操縦ができるため、将来的には操作の手間をなくし、必要なデータを簡単に取得できる仕組みを目指しています。
また、画像解析に関しては、藻場内に設置された枠を用いて被度計測を行うことで、これまで目視で行っていた作業をAIが自動で算出することができるようになります。さらに、複数の海藻種を判定するAIモデルの開発にも取り組み、複雑な藻場においても正確なデータを取得できるようにします。
今後の展望
この取り組みを通じて、ブルーカーボンクレジット創出の新たなモデルケースを作り出し、他地域でも技術を導入していくことを目指します。BlueArchは、効率的・正確なブルーカーボンモニタリングの実現に向けて、引き続き研究開発を進めます。その過程で、多くの地域の漁業者と連携し、持続可能な方法でのブルーカーボン保全を推進していく計画です。
この新しいプロジェクトは、単なる環境保全にとどまらず、地域経済の活性化にも寄与することが期待されており、多くの関係者の参加が求められています。今後も水中ドローンやAI技術を活用したブルーカーボンモニタリングに関心のある方々の参加をお待ちしております。