すい臓がんに関する新たなる発見
Craif株式会社と国立がん研究センター中央病院の研究チームは、すい臓がんとその悪液質に関連するマイクロRNA解析の成果を発表しました。この研究は、2025年1月に開催される米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO GI 2025)にて紹介されます。Craifはがんの予防や早期発見に向けた取り組みを進めており、同社のミッションは「人々が天寿を全うする社会の実現」です。
共同研究の概要
研究の主な目的は、すい臓がん患者の悪液質を早期に発見し、治療に結びつけることです。悪液質とは食欲不振や体重減少、骨格筋の消耗を特徴とする複合的な代謝異常であり、進行すると患者の生活の質(QOL)を著しく低下させ、がん関連死の重要な要因の一つでもあります。
研究では59名のすい臓がん患者を対象に、血清および尿のサンプルからエクソソームを抽出し、次世代シークエンサーでマイクロRNAの網羅的解析を行いました。その結果、血中および尿中で141種類のマイクロRNAが共通で検出され、血清中では81種類、尿中では33種類のマイクロRNAが特異的に検出されました。
悪液質に関連するバイオマーカーの同定
特に注目すべきは、尿サンプルにおいて悪液質の有無によって発現量が異なる2種類のマイクロRNAが特定された点です。血清サンプルでは発現の違いが見られなかったのに対し、尿サンプルでは明確な差が確認されました。この結果から、尿中マイクロRNAが悪液質の早期発見において有用なバイオマーカーになり得る可能性が示唆されています。
さらなる研究と実用化へ向けて
尿中マイクロRNAの実用化に向けては、血中では認められなかったマイクロRNAの差異が尿中でどのように生じるのか、そのメカニズムの解明が必要です。また、尿中マイクロRNAと悪液質との関連についても、今後の研究が求められます。
ASCO GI 2025について
ASCO GI 2025は、2025年1月23日から25日にかけてカリフォルニア州サンフランシスコで開催されます。公式サイトには、当イベントに関する詳細情報が掲載されています。
Craifの企業情報
Craif株式会社は、2018年に名古屋大学発のベンチャー企業として設立されました。病気に関連する生体物質を体液から高精度で検出する技術「NANO IP®︎」を持ち、がんの早期発見や個別化医療の実現に向けた研究開発に取り組んでいます。特に、尿がん検査「マイシグナルシリーズ」の提供を通じ、医療の進化に寄与しています。
最後に
本研究は、がん患者にとって希望の光となる可能性を秘めています。医療技術の進歩により、今後ますます多くの人々が早期にがんを発見し、適切な治療を受けられるようになることが期待されます。Craifは今後もこの分野での研究を続けていく所存です。