業界を超えた連携によるケミカルリサイクル
プラスチック問題が深刻化する現代において、資源循環の重要性が叫ばれています。特にPET(ポリエチレンテレフタレート)は、飲料用ボトルなど身近な製品に幅広く使用される一方、リサイクルの難しさも併せ持っています。 その中で、花王株式会社をはじめとする8社が連携し、非食品用途のPETを飲料用ボトルの原料にするケミカルリサイクルの新たな取り組みを開始しました。本記事では、その背景や目指す未来について詳しく解説します。
新しいリサイクルの挑戦
今回の連携には、花王、キリンホールディングス、JEPLAN、TDK、村田製作所、ファンケル、キリンビバレッジ、アサヒ飲料の8社が参加しています。この共同プロジェクトは、使用済み飲料ボトルだけでなく、工業用フィルムや化粧品ボトル、自動販売機用の商品サンプルなど、さまざまな非食品用途PETを原料としてケミカルリサイクルを実施し、飲料用ペットボトルへのリサイクルを目指しています。
特に注目すべきは、今回の取り組みが国内初の試みである点です。これまでのリサイクル活動では достаточно なプラスチックの資源循環には達しておらず、その解決策として非食品用途を原料へ加えることで新たな道が開かれました。
各社の役割と原材料の供給
8社それぞれが果たす役割について、以下のように整理できます。まず、TDKと村田製作所は工業用PETフィルムを供給します。これは、電子部品製造の際に発生する端材を利用したもので、リサイクルに向けた効率的な方向性を示しています。
次に、花王とファンケルは、顧客から店頭で回収した化粧品用ボトルを提供します。この取組みは、消費者とのインタラクションを重視し、リサイクルの重要性を広める役割も持っています。さらに、自動販売機用の不要な商品サンプルをキリンビバレッジが供給します。このように多様な原材料を活用することで、幅広いリサイクルの実現が期待されます。
その後、ペットリファインテクノロジーがケミカルリサイクルを行い、質の高い再生PET樹脂を製造する役割を担います。この再生PET樹脂は、各社での品質評価を経て、飲料用ペットボトルや化粧品ボトルへの採用が検討されます。
実施予定と今後の展望
各社は、ケミカルリサイクルの原料を利用し始める時期を設定しています。例えば、キリンビバレッジは4月から飲料用ペットボトルに、花王は5月から化粧品ボトルに新たな材料を導入する予定です。アサヒ飲料も10月以降の採用を目指しており、ファンケルについても導入を模索しています。
結論
この取り組みは、単なるリサイクル技術の革新に留まらず、業界全体が環境保護に向けた共通の目標を持ち、協力する姿勢を示す重要な例となり得ます。花王が掲げる「未来のいのちを守る」というビジョンに基づき、持続可能な社会の実現に向けた一歩が踏み出されています。リサイクルの新しい形が進むことで、ますます多くの企業がこの流れに参加し、より良い未来を築くことが期待されます。