スカンジウム置換が導くナトリウムイオン電池の革命

ナトリウムイオン電池の新たな可能性



近年、再生可能エネルギーの利用が進展する中で、蓄電技術の重要性が増しています。その中でも、ナトリウムイオン電池は資源の豊富さから、特に注目されています。しかし、これまでナトリウムイオン電池は、サイクル寿命が短く、充放電のたびに劣化するという課題を抱えていました。

スカンジウム置換による革新



東京理科大学の研究グループは、ナトリウムイオン電池の正極材料であるP’2型Na0.67MnO2において、マンガンイオンの一部をスカンジウムイオンに置換することで、耐水性とサイクル寿命を向上させることに成功しました。この置換により、ナトリウムイオン電池の性能が大幅に改善されることが期待されています。

具体的には、研究チームが合成したP’2型Na0.67[Mn0.92Sc0.08]O2 (o-NMSO8)は、初期放電容量170 mAh/g以上、300サイクル後の容量維持率が約60%という優れた成績を示しました。これは、充放電時の構造が最適化され、部材の安定化に寄与しているためです。

研究の背景と新たな発見



ナトリウム含有層状酸化物NaxMnO2は、充放電に伴い材料内部の構造が複雑に変化し、マンガンイオンの酸化還元反応がサイクル寿命を短くする原因となっていました。しかし、スカンジウムイオンで若干の置換を行うことで、この酸化還元反応が改善され、結果としてサイクル寿命が延長されることが明らかになりました。

今回の研究では、スカンジウム置換がP’2型構造の精緻な制御をもたらし、特にヤーン・テラー歪みと呼ばれる構造特性が相乗的に作用することが見出されました。これにより、スカンジウムの存在がナトリウムイオンの挿入・脱離をスムーズにし、より良い電池性能を引き出します。

電池性能への影響



具体的な性能評価として、o-NMSO8と他の材料の比較を行ったところ、o-NMSO8が優れた充放電サイクル特性を示しました。特に300サイクル経過後も、その性能が維持されていましたが、o-NMOでは結晶性が失われていました。この結果は、ナトリウムイオン電池の今後の実用化に向けての希望を高めるもので、スカンジウム置換が持つポテンシャルが浮き彫りとなりました。

さらなる研究への期待



駒場慎一教授は、本研究の成果が高性能なナトリウムイオン電池の開発に向けた重要な指針となるとコメントしています。この技術革新は、持続可能なエネルギー貯蔵システムの実現に向けた大きな一歩となるでしょう。

この研究は、2025年9月12日に国際学術誌「Advanced Materials」にて発表されました。この成果が多くの人々に影響を与え、将来的な電池技術の進化を促進することを期待しています。

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