核融合実験炉イーターに向けた初号機完成
三菱重工業株式会社と国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)は、南フランスで建設が進められている核融合実験炉、イーター(ITER)向けに、外側垂直ターゲットという重要な構成要素の実機初号機をついに完成させました。このプロジェクトは、2020年6月から始まり、2024年7月には実機大のモックアップ機を製造予定です。この初号機の完成は、日本企業だけで進められたものであり、三菱重工の優れた技術力が光ります。
ダイバータの重要性
ダイバータは、トカマク型の核融合炉において決定的な役割を果たす機器です。核融合反応を持続させるためには、プラズマ中の未燃焼燃料や核融合反応によって発生する不純物を排出する必要があります。初号機は、最高で20MW/m²という熱負荷に耐えなければなりません。これは、小惑星探査機が大気圏に突入するときの熱負荷に相当し、スペースシャトルの30倍です。このため、ダイバータは過酷な環境で使用され、高融点ながら難削材であるタングステンが使用されています。
精密な製作技術
ダイバータのプラズマ対向面には、精密な形状加工が施されています。全体形状や個々の部品の加工には、0.5mm以下の精度が求められます。このような高精度な製作技術は、ITER計画の成功に不可欠です。QSTは、ITER計画初期からダイバータの研究開発に力を入れ、三菱重工と協力して、最も難易度が高いとされるダイバータの製作に挑戦しています。
ITER計画と日本の技術力
日本は、ITER計画においてダイバータやトロイダル磁場コイル(TFコイル)などの主要機器の設計と製作を担っています。QSTは、ITER向けのTFコイルに注力し、2023年までに日本分担分全てを出荷しました。また、三菱重工も5基を担当しており、今回の外側垂直ターゲットの実機製作38基全てを手がけています。初号機の完成は、今後2025年度からの納入開始へとつながる重要なステップです。
環境に優しいフュージョンエネルギー
核融合は、地球上での持続可能なエネルギー供給の一つの解決策とされています。重水素や三重水素を燃料に使用することで、CO2を発生せず、リチウムは海水から無限供給可能です。このため、フュージョンエネルギーはエネルギー問題を根本から解決する可能性があります。
未来への展望
今回の初号機完成により、日本はITER計画にさらなる貢献をすることが期待されます。今後、続いて建設される予定の核融合原型炉の開発にも注力します。ITER計画は、日本の産学官が協力して取り組む途方もない挑戦であり、その成果は世界中の持続可能な発展に寄与することでしょう。
この素晴らしい技術の進展は、我々の未来を築く基盤となります。今後の展開に注目し、フュージョンエネルギーのさらなる発展を期待しましょう。