デジタル技術で障がい者雇用を促進!西鉄グループがモデル企業となり、新たな就労支援スキーム構築へ
特定非営利活動法人セルプセンター福岡(福岡県大牟田市)は、日本財団と福岡県の助成を受け、「デジタル技術を活用した障がい者就労推進事業」を実施する。この事業は福岡県初の取り組みであり、西日本鉄道株式会社(西鉄)を核とした西鉄グループと、社会福祉法人さつき会、株式会社綜合キャリアトラストの協力のもと行われる。
近年、障がい者の働き方への関心が高まる中、企業に義務付けられる障がい者雇用の割合を示す「法定雇用率」は段階的に引き上げられている。2024年4月1日には、法定雇用率はこれまでの2.3%から2.5%に引き上げられ、更なる障がい者雇用の促進が企業に求められている。
しかし、障がい者の就業が一般的に困難と認められる業種については「除外率制度」が適用され、雇用義務が軽減されてきた。この制度は完全廃止に向けて段階的に縮小が予定されており、2025年には除外率が10%引き下げられることが決定している。これにより、鉄道業や医療業などの除外率適用業種は、雇わなければならない障がい者数が増加するため、障がい者が働く職場環境を整備することが喫緊の課題となっている。
西鉄グループがモデル企業となり、障がい者雇用の促進へ
「デジタル技術を活用した障がい者就労推進事業」は、西鉄グループをモデル企業とし、他地域や事業にも対応する汎用性の高いスキームを構築することで、障がい者雇用の促進へと繋げることを目指している。
事業では、西鉄グループ6社を対象に、障がい者向けの業務の切り出し、マニュアルの作成、雇用前訓練、採用から定着支援までの一連の支援を行う。運営チームとして、知的障がい者の就労支援に強みを持つさつき会と、障がい者就労支援、精神障がい者へのサポート経験が豊富な綜合キャリアトラストが協力する。
デジタル技術を活用した実践的な訓練
雇用前に行われる訓練では、ARグラスなどのデジタルテクノロジーを活用した実践的なトレーニングを予定している。訓練では、各企業の業務内容や就業環境に合わせた支援ツールとしてARグラスやテレワークオフィスを活用し、訓練から就労へのスムーズな移行を目指している。
事業実施後の展開
この事業を通じて得られた成果は、除外率適用業種である道路旅客運送業や鉄道業をはじめ、これまで障がい者の雇用が難しいと考えられていた企業や障がい者雇用を推進する企業へ、障がい者雇用のモデルケースとして提供される予定だ。
福岡県知事のコメント
Fukuoka県知事の服部誠太郎氏は、この事業について、「障がいのある方の就労分野の拡大を支援していきます。運輸にまつわる企業では、障がいのある方が就職するのは難しいと考えられていましたが、この分野でも雇用を進めることを目指しています。このモデル事業では、西鉄グループ6社のご協力をいただきながら、障がい者の皆さんも就業が可能だと考えられる業務の切り出しを行い、就職前にARグラスを使って模擬訓練を行います。これにより、障がい者の皆さんの就職への心理的な障壁を、実際の就職前に取り除きたいと思っています。さらに、このような訓練を基にして、作業ごとに訓練手順のマニュアルを作り、同業種の企業の皆さん等に配ることにより、今回モデル企業となる西鉄グループ以外の会社でも、障がい者の皆さんの就業を広げていきたいと思います。」と述べている。
障がい者雇用促進に向けた取り組み
セルプセンター福岡は、今回の事業を通じて、障がい者雇用を促進し、障がい者と企業双方にとってより良い働き方を創造することを目指している。デジタル技術を活用することで、障がい者の就労機会拡大と、企業の生産性向上に貢献していくことが期待される。