小細胞肺がん治療の費用対効果を高齢者集団で分析
株式会社ヘルスケアコンサルティング(HCC)と神戸低侵襲がん医療センター(KMCC)を中心とした研究チームが、71歳以上の高齢者を対象にした小細胞肺がん治療に関する重要な研究結果を発表しました。今回の研究では、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)のアテゾリズマブとデュルバルマブに焦点を当て、これらの費用対効果をリアルワールドデータを基に検証しました。発表は、2024年9月にスペイン・バルセロナで行われるESMO Congress 2024で行われる予定です。
研究の背景
日本国内では少子高齢化が進行しており、高齢者の医療費が年々増加しています。特に、悪性新生物による死亡が主要な死亡原因となっている中で、医療提供の効率性が重要な課題となっています。特に進展型小細胞肺がんは、その治療において高い治療費を伴うため、費用対効果の分析が求められています。
研究方法
研究は、電子カルテデータとレセプトデータを統合したデータセットを使用し、実際に治療を受けた患者の医療費と治療成績を分析しました。対象は、アテゾリズマブまたはデュルバルマブによる治療を受けた71歳以上の小細胞肺がん患者。8つの医療機関から得られた274例のデータから、最終的に76例が選定され、各治療法の有効性とコストを比較しました。
重要な結果
分析の結果、アテゾリズマブ群は1か月あたりの医療費が約1,012,397円、一方のデュルバルマブ群は約1,536,132円と、アテゾリズマブの方が経済的に優れていることが判明しました。有効性の指標である全生存期間(OS)は、両群で大きな差はなかったものの、無増悪生存期間(PFS)ではデュルバルマブがアテゾリズマブよりも長い結果が示されました。さらに、アテゾリズマブ群では、免疫関連有害事象の発生率が低いことも確認されています。
結論と今後の展望
本研究では、71歳以上の高齢者における小細胞肺がんの治療において、アテゾリズマブの方が経済的に優位であることが示されました。デュルバルマブは有効性の面で若干優勢な部分もありますが、コストと副作用の観点からはアテゾリズマブが選ばれるべき選択肢と考えられます。この研究成果は、今後のがん治療における経済的な意思決定に影響を与えると期待されます。
今後、HCCとKMCCは、さらに詳細な解析を行い、論文化を進める予定であり、特定の患者群におけるさらなる研究を実施していく方針です。電子カルテとレセプトデータを利用した当研究の手法を他のがん種に拡張し、医療サービスの効率化に貢献していくことが目指されています。