地理的距離と支援
2025-04-08 15:16:43

地理的距離が友好国支援に与える影響とは?日本とチェコのデータ分析

地理的距離が友好国への支援に与える影響



近年の国際情勢は、多国間の協力や支援のあり方を模索しています。その中で、早稲田大学の多湖淳教授とオランダのエラスムス大学のミカル・オンデルコ教授の研究チームは、地理的距離が友好国への支援の意欲に与える影響を明らかにするため、オンラインでのサーベイ実験を実施しました。この調査は日本とチェコの市民を対象に、様々な危機シナリオに対する支援意識を探る試みです。

研究の背景と目的



ウクライナ戦争をはじめとする国際的な危機の中、友好国に対する支援がどのように変化するかは重要なテーマです。この研究では、特に「地理的距離」がどのように市民の支援意識を影響するのかについて焦点を当てました。地理的な近さは、従来の政治学の観点から、友好国への支援を決定する上で重要な要因とされていますが、その影響を実証的に検証するデータは不足していました。

研究手法



研究チームは、2023年10月にオンラインサーベイ実験を行い、日本とチェコの各国から約1000名ずつの参加者を募りました。参加者には、「ロシアのモルドバ侵攻」と「中国の台湾侵攻」という架空の危機シナリオを提示し、支援支持の程度を測定しました。また、これらのシナリオと中立な状況を比較し、地理的距離が支持意識にどのように影響するかを詳細に分析しました。

主要な結果



この研究の結果、地理的距離が顕著に友好的関係を持つ国への支援意識に影響を与えることが確認されました。特に、「中国による台湾侵攻」のシナリオにおいて、日本の参加者の56%が軍事支援を支持したのに対し、チェコの参加者では21%と、明らかな差が見られました。さらに、ロシアのモルドバ侵攻に関しては、日本での支援支持は低く、チェコでは高いという異なる傾向が示されました。これらの結果は、地理的距離が人々の意識に及ぼす影響を裏付けるもので、ウクライナやガザが「遠い」と感じられることで無関心になる可能性を示唆しています。

結果の解釈



こうした結果は、特に日本においては「台湾だから助けるべき」という世論が存在することを示しています。つまり、地理的な距離の影響を無視できない一方で、日本と台湾の歴史的・文化的なつながりが支援意欲にはプラスに働いていることが分かりました。また、本研究は男性や軍事主義的傾向を持つ人が支援を支持する傾向があることも明らかにし、国際問題における社会的背景の重要性を示しています。

今後の展望



本研究から得られた知見は、友好国への支援を増やすための新しい戦略の策定にも寄与する可能性があります。特に、距離感を変更することや、台湾の地理的近さを再認識させることは、支援を高めるための効果的なアプローチと言えるでしょう。今後は、異なる政治的背景の下で、この研究の結果がどのように変化するのか、再現実験が求められています。

結論



国際政治においては、距離の認識が市民の政策支持に大きな影響を及ぼすことが確認されました。この研究は、地理的要因がいかに国際支持を動かすかを理解するための手掛かりを提供しており、今後の研究の発展が期待されます。


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