ASEAN地域における脱炭素化と経済成長に向けた研究成果
近年、ASEAN加盟国はネットゼロを目指す動きが加速していますが、その実現には多くの課題が残されています。特に化石燃料への高い依存度が問題視されており、経済成長と脱炭素を両立させる現実的な戦略が求められています。こうした背景を受け、三菱総合研究所(MRI)とASEAN Centre for Energy(ACE)は2024年3月に共同研究を開始しました。
共同研究の目的と意義
この研究の主な目的は、カーボンプライシングによるASEANの産業への影響を分析し、地域の競争力を維持しつつ脱炭素社会への移行を促進するための提言を行うことです。具体的には、異なる産業がどのような形で脱炭素の過程で影響を受けるのかを明らかにし、その結果に基づいて適切な政策を提案します。
主な研究成果
今回公表された研究成果には、次のようなポイントが含まれています。
- - 石油化学産業などエネルギー多消費分野への影響を考慮した柔軟な制度設計: カーボンプライシングが進む中で、特に高いエネルギー消費が課題となる産業に対する支援策が必要です。
- - 高付加価値産業の競争力強化: 脱炭素エネルギーの調達環境を整えることで、競争力を維持しつつ経済成長を図る必要があります。
- - カーボンプライシング収入の活用: 産業構造の転換を図りながら、得られた収入を効果的に活用する戦略が求められています。
特に、ダイナミックな市場環境に対応するための柔軟な政策が不可欠であり、この提言はASEANの各国にとっての重要な指針となるでしょう。
第8次ASEANエネルギー見通し
ACEが発表した「第8次ASEANエネルギー見通し」では、初めてカーボンニュートラルシナリオに関する詳細な分析が行われています。これは地域全体の脱炭素化を進めるための重要なレポートとして位置づけられています。
MRIは、国際貿易モデルを駆使して、カーボンプライシングがどのようにASEANの産業構造に影響を及ぼすのかを詳細に分析しました。これにより、各国が抱える具体的な課題に対応するための施策が浮き彫りにされています。
今後の展望
MRIとACEの今後の取り組みは、ASEAN地域における脱炭素化と経済成長の両立を目指した政策の実現に向けてさらなる深化が期待されます。日本におけるグリーントランスフォーメーション(GX)の取り組みも参考にしながら、ASEAN各国の特性に応じた戦略を共に考えていく方針です。
このような共同研究の成果は、ASEAN地域における持続可能な成長に向けた重要な一歩となるでしょう。
参考資料
これからのASEAN地域のエネルギー政策は、環境と経済の二つの側面からのアプローチが求められています。今後も心強い研究成果が発表されることを期待しています。