住友電設株式会社における株主提案の背景と意義
2025年5月14日、カタリスト投資顧問株式会社は、同社が投資助言を行う国産のマネックス・アクティビスト・マザーファンド(以下「MAMF」)およびケイマン籍のJapan Catalyst Fund(以下「JCF」)を通じて、日本企業へのエンゲージメント活動を行っていることを発表しました。その中で、特に注目を集めているのが、住友電設株式会社に対する株主提案です。
株主提案の基本情報
提案の背景には、2025年6月に開催される住友電設の第100期定時株主総会において、MAMFが提案する議案が存在します。この提案は、住友電設の剰余金処分に関するもので、年間配当金が純資産の6%を加味した額となるような剰余金処分を求めています。
提案内容の詳細
提案の具体的な内容は、以下の通りです。まず、配当財産は金銭として取り決め、1株当たりの配当額は124円から、取締役会提案の配当額を控除した金額となります。また、剰余金の配当は株主総会の日から効力が生じ、支払いはその翌営業日から3週間後に開始される予定です。
提案の目的
この提案は、少数株主に対して公正な資本政策を施行するための最低限の基準として、純資産配当率(DOE)6%相当の配当を実施することを狙いとしています。なぜこのような配当政策が求められるのかというと、東京証券取引所の市況見直し会議を踏まえ、上場企業の資本政策の見直しと少数株主保護の必要性が高まっているからです。
住友電設は親子上場の状態にあり、少数株主にとって不透明な資本政策が実施されることで、企業としての信頼性が損なわれる恐れがあります。このため、本提案が少数株主の利益を意識したものであることは重要な意味を持ちます。
住友電設の事業環境と株主還元
住友電設の強みは、人的資本の活用を重視したアセットライトなビジネスモデルにあります。設備投資が少なくて済むため、収益性も高く、そのための良好な市場環境が整っています。こうした要因から、株主資本のさらなる増加は必要ないと考えられており、配当支払の増額が求められる理由となっています。
さらに、現在の株主還元方針が維持され続ければ、株主資本の増加によりROE(株主資本利益率)が低下する見込みがあります。したがって、ROEを維持するためにもDOE6%が適切な水準であると認識されつつあります。
結論
このように、カタリスト投資顧問が住友電設に対して行った株主提案は、少数株主保護の観点や資本政策の見直しといったさまざまな要素が絡んでおり、同社にとっても重要なターニングポイントとなるでしょう。今後の展開に注目です。特に、MAMFが提案した株主提案がどう評価され、どのように実行に移されるかは、企業の透明性や信頼性向上にも影響を与えるでしょう。これにより、より健全な企業経営の確立が期待されます。