地域資源の香りを再発見するSOU FRAGRANCEの新しい挑戦
香りが持つ力を再評価し、地域資源を香りとして再創造する新たなスタジオ、
SOU FRAGRANCE(ソウ フレグランス)が注目を集めています。2024年に設立されたこのスタジオの代表、折井茜氏は、地域に根ざした素材を大切にし、「地産地香」という独自の哲学のもと、香りの新しい価値を生み出すことに情熱を注いでいます。
この活動の基盤にあるのは、地域ごとに存在する未利用資源、たとえば果皮や剪定木などです。これらを香りという形で再構築することで、地域の景観や記憶が再生され、新たな地場産品文化が形成されています。SOU FRAGRANCEは、このような資源と地域のストーリーをつなげる役割を果たし、香りを通じて地域の魅力を引き出しています。
“地産地香”の哲学とは
SOU FRAGRANCEが大切にしている「地産地香」とは、地元で採れる素材をその土地ならではの香りとして再構成する考え方です。素材の背後に潜む記憶や文化を香りに溶け込ませることで、単なるプロダクトとしての香り以上の意味を持たせています。たとえば、特定の香りにはその地域ならではの歴史や営みに由来する深い意味があります。
香りは不可視でありながら、私たちの心に深く入り込み、感情や思い出を呼び起こす特性があります。SOU FRAGRANCEは香りを「プロダクト」として販売するのではなく、空間や人との関係性を繋ぎ直し、地域の風景を想起させる「記憶のメディア」として活用しています。
香りによる空間演出とその効果
SOU FRAGRANCEは、香りの演出を通じて駅や公共空間、宿泊施設などでの体験設計に取り組んでいます。最近では、JR九州折尾駅における香り実証実験「Awai – 折尾ノ香」を通じて、旅人や地域住民が心地よく感じられる香りを調和させる努力をしています。香りは、まるで自然の一部のように空間に溶け込み、訪れる人々に「あぁ、どこかで嗅いだことがある」と思わせ、その地域の記憶を運んでくれます。
SOU FRAGRANCEで使用されるのは、100%天然の精油です。これにより、感情や記憶に作用する作用を促進し、ストレス軽減や自律神経の安定を助けることが期待されます。香りは難しいものではなく、簡単に私たちの日々の生活の中に取り入れられるものであるという理解が広まることを期待しています。
未利用資源を香りに変える取り組み
日本各地には多くの未利用資源が存在し、SOU FRAGRANCEはその可能性を最大限に引き出すプロジェクトを推進しています。たとえば、大分県ではカボス加工のさいに生じる搾汁残渣や、石川県の成長しすぎたスギ、熊本県の未成熟青柚子などが対象です。これらはこれまで廃棄・焼却されがちでしたが、SOU FRAGRANCEはそれらを香りとして再利用し、新たな価値を見出す設定に取り組んでいます。
さらに、地域の農家や行政との連携を強化することで、観光や教育、福祉などの分野でも価値を生み出しています。たとえば、地域の香りを体験することで、地域の魅力を訪問者にしっかりと伝えることが可能であり、地元の人々にも新たな発見や学びの場を提供しています。
未来に向けた展望
SOU FRAGRANCEは、今後の展望として、地域素材の香料化を推進し、地域ブランドの構築を支援することを計画しています。さらに、都市の空気に関する研究も行い、香りやウェルビーイングとの関係を模索する姿勢を持ち続けています。
香りはただの嗅覚の存在だけに留まらず、記憶や感情、その土地の文化の要素が融合した体験を生み出す重要なメディアです。SOU FRAGRANCEは、その美しさと可能性を広めるため、全国各地で地域資源を活用した持続可能な取り組みを進めています。これからも、地域との協力を大切にし、香りを通じて新たな物語を創造し続けることでしょう。