近年、環境問題への関心が高まる中、交通分野でも持続可能なエネルギー活用が求められています。特に、鉄道車両の脱炭素化は重要な課題の一つです。この流れを受けて、JR東海、ENEOS、日立の3社は、水素を用いた動力提供のためのサプライチェーン構築に関する基本合意書を締結しました。このプロジェクトは、水素を「つくる」「はこぶ」「つかう」という3つの側面から研究が進められ、持続可能な未来への一歩となることを目指しています。
水素サプライチェーン構築の課題
水素動力車両の運行には、安定的かつ大量の水素供給が必要とされます。そのためには、単なる車両の開発だけでなく、水素の供給や貯蔵、さらには、車両への充填とその利用といった一連の流れを整えることが必要です。水素を輸送する方法としては、液化水素やメチルシクロヘキサン(MCH)などが挙げられます。それぞれの特性を理解し、不足を避けるための最適な水素キャリアの選定が求められます。
3社は、液化水素やMCHを含むさまざまな水素キャリアの特性を比較し、鉄道に最適なサプライチェーンのあり方を検討することになります。また、MCHから水素を取り出すための新たな技術開発にも挑むとのことで、国内外での事例がない挑戦とも言えるでしょう。
3社の役割と連携
- - JR東海:水素動力車両の運行で必要な水素の供給量や、充填に関する調査を行い、「つかう」部分の検討を進めます。
- - ENEOS:CO2フリーの水素製造とそのサプライチェーン構築を目指し、大規模な水素製造や輸送に関する技術開発を担います。
- - 日立:水素の製造から利用までのサプライチェーン構築に向けた技術開発へ取り組み、特にMCHから水素を取り出すシステムに関して実証経験を活かします。
3社はそれぞれの強みを活かし、鉄道分野における水素の利用を促進することで、カーボンニュートラル社会の実現に寄与することを目指しています。この連携は、広く環境意識の高まる時代において重要な試みとなるでしょう。
未来に向けたビジョン
水素エネルギーの利用は、持続可能な環境を支える上での鍵を握っており、鉄道交通においてもその導入が進むことは期待されます。特に、JR東海が非電化路線での水素動力車両の運行を試みる中で、新しいエネルギー政策のモデルが生まれるかもしれません。今後の取り組みが注目される中、3社の連携による成果に期待が寄せられます。