新たなグリーン水素生成技術の実現
立命館大学の金子健太郎教授を中心とする研究チームは、ミストCVD法を駆使した新しい水素生成技術の実証に成功しました。この技術は特に低コストで高性能な水電解セパレーターの実現に寄与するものです。
研究の背景
2050年のカーボンニュートラル社会実現を見据え、日本政府は水素を主要なエネルギー源とする新たな国家戦略を打ち出しました。再生可能エネルギーの一部を水素として変換し、蓄え利用することが、環境問題の解決策として期待されています。この文脈で、岩崎電気株式会社とアイテック株式会社との共同研究が進められてきました。
ミストCVD法の利点
ミストCVD法は、化学気相成長法の一種で、酸化物半導体の合成に適した成膜技術です。従来の真空装置を用いずに安価に薄膜を成膜できるため、これまで高コストだった水電解セパレーターの開発にも活用されることが期待されています。特に、酸化インジウムと酸化スズをコーティングしたセパレーターは、低抵抗で高耐食性を兼ね備えています。
実験結果とその意義
研究グループは、硫酸水溶液中における電極性能を評価しました。実験の結果、ミストCVD法により成膜したSnO₂とIn₂O₃の基板は、接触抵抗が非常に低く抑えられ、従来の貴金属を使用したものと同等の性能を示しました。特に、耐腐食性についても優れた結果を出し、実用化への道を開きました。
今後の展望と重要性
この技術の応用により、希少金属や貴金属を使用せずに安価で高効率な水の電気分解が可能となります。再生可能エネルギーを活用した水電解技術の普及は、持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩です。現在、研究成果は特許出願中であり、さらなる特性改善が期待されています。
論文情報
実験の成果は、2024年4月15日に「材料」ジャーナルに掲載される予定です。この論文は新しいセパレーターの性能を証明し、並行して開催される国際会議での発表もあります。
参考文献
まとめ
本研究の成果は、環境問題やエネルギー問題に直結した意義深いものであり、今後の研究開発の進展が期待されます。また、国際的にも注目を浴びる分野であるため、産業界との協力が必要不可欠です。