日本の農業の未来を考える
2024年6月、約25年ぶりに改正された「食料・農業・農村基本法」により、日本の食料生産や農業の進展が新たに注目されています。この改正を受け、株式会社三菱総合研究所(以下、MRI)は、食料安全保障の向上を目指し、日本の農業が進むべき方向性を提言しています。
背景と現状
日本の農業は、過去数十年にわたり、さまざまな課題に直面してきました。その中で、特に懸念されているのが「供給力の低下」です。MRIの予測によると、2050年までに日本の耕地面積はおよそ270万haにまで減少し、農業経営体の数も大幅に縮小する見込みです。このことは、食料自給率の低下を引き起こし、結果的に食卓への影響を及ぼすことになります。
今日、私たちの食卓は一定の充実を維持していますが、未来の不安要素として、有事の際の農業生産力や自給力が懸念されています。このため、食料安全保障の観点から、農業生産の基盤を強化することが急務です。
2050年に目指すべき状態
MRIが提案する理想的な状態では、2050年には耕地面積が350万ha、農業生産額が8兆円、経営体数が21万とすることが求められています。この数値は、現状の食料安全保障を維持する上での最低限の目安であり、未来の日本を支える農業の礎となるでしょう。
提言内容
MRIの提言には、以下の三つの重要な政策が含まれています。
1.
経営耕地集積の法制度見直し - より効率的な農業経営ができるよう、法制度の改革と行政からの支援が必要です。
2.
農業人材育成 - 新しい農業技術や知識を持った人材の育成が重要であり、農業法人の経営力向上も目指します。
3.
デジタル化の推進 - 農業経営にDX(デジタルトランスフォーメーション)を導入することにより、経営状況を見える化し、政策判断への活用を進めます。
これらの提案を実行することで、日本の農業は将来にわたっての持続可能な成長を実現できるでしょう。
余剰農地の有効活用
また、70万ha以上に及ぶ余剰農地の活用も、今後の重要な課題となります。この農地をどのように管理し、どのくらいの財政コストをかけるのか、国民的な議論を通じて合意形成を図る必要があります。これは、食料安全保障の基盤を確保するために不可欠な要素です。
今後の展望
今後、食料・農業・農村基本計画が策定される中で、MRIは客観的かつ科学的なデータに基づいて分析を行い続けます。そして、現場の実情を反映させた政策提言を行うことで、中長期的に「豊かな食卓」の実現に寄与していく考えです。
具体的な政策が施行されることで、日本の農業は新たな局面を迎え、将来にわたる食料安全保障が確保されることを期待します。私たち一人一人が農業と食に対する意識を高め、未来の食卓を支えていくことが求められています。